蝦夷地別件 | いしだ壱成オフィシャルブログ『Arrivals』powered by アメブロ

蝦夷地別件

忘れられた歴史は、記憶された歴史よりもずっと重い。

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いよいよ、僕にとっての今年の集大成ともいえる作品の本番が近づいて来ました。

稽古は厳しく、また激しく、
力強く進み、クオリティも
日に日に高まって来ています。

ピープルシアター第58回公演、
平成25年度( 第68回 ) 文化庁芸術祭出品作品。

『蝦夷地別件』

原作、船戸与一

脚本、演出、森井睦

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船戸与一さんの長編小説を舞台で。

森井睦氏率いるピープルシアターとしては、『砂のクロニクル』『新宿 夏の渦』に続いて三本目の船戸作品の舞台化になります。

http://peopletheater.moo.jp/newpage2.html

今回はタイトルからもわかる
通り、蝦夷地のお話しです。

蝦夷地、つまり現在の北海道。

元々は大いなるアイヌの大地、アイヌモシリ。

先住民であるアイヌの人々が和人(日本人)に迫害され、蔑まれ、そんな中にアイヌ同志でも裏切りや内部抗争が起こり、和人との間に共存という名の妥協を迫られて、最終的には宗教の名の下に『日本人』となって行く過程の悲劇を抉る様に舞台上に描き出します。

この作品に携わりながら、この物語は今の日本を風刺している様な感覚をあちこちに抱きます。

豊かな暮らしとは何か。

お金とは何か。

自然とは何か。

人間とは何か。

民族とは何か。

大地は一体、誰のものなのか。

海は一体、誰のものなのか。

生きるとは、何か。

憎しみ、怒り、憤り、とてつもない争いの、負の連鎖。

そしてそれはとても大きな権力が、コントロールして彼らにそうなる様にもたらしたものでもある。

今の日本、ともいえるし、
今の世界、ともいえると感じます。

もしかすると世界の縮図。

先ずは、悲劇的な最期を迎えたアイヌの人々の鎮魂を御祈りすると共に、彼等の痛ましい死の数々を演劇の舞台を借りて再現させて頂く事に大きな責任を感じ乍ら、日々稽古に励み、厳粛に本番を迎えたいと心より感じております。

一人でも多くの方に劇場でお会い出来ます様に。

愛をこめて。

壱成