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VOiCE (58)

by KAZUKI

 

 

 

ケンジが心配そうにシュージの顔を、覗き込んでいた。

「シュージ。今夜のことは、忘れてくれ。お前にも分かるはずだ。ミカリは、おババが幽霊だとは思っていない。彼女には、おババしかいないんだ」

シュージは、ミカリの悲しい過去を思い黙って頷いた。

彼は眠りから覚めて、そのベンチに座るまでの経緯をケンジに尋ねたが、彼は話をはぐらかした。そして、軽く笑った。彼の言うことに黙して首肯したものの、シュージの胸中には白い霧のような疑問が残る。

「ミカリさんのためにその方が良いならば、これ以上は何も聞かない」

シュージは、彼女の不可解な夢を思い浮かべてまた寝不足が祟ったようだと、つまらない冗談のように呟いた。するとケンジが、もういちど白け気味にけらけらと笑った。

 

つづく