小説ブログのKAZUKIです🐼
「小説ブログは連載に限る」を信条に日々小説三昧🍵
今夜も書きます📝
(現在進行形)は、ラブホラー「VOiCE」😱
読んでみて下さい! ヨロシクどうぞ👋
VOiCE (12)
by KAZUKI
珂怜は、ブルーの瞳をシュージの顔に向けて一言呟く。その声は頭蓋を通り抜けて、そのまま彼の大脳基底核に突き刺さった。
「ガンバッテネ!」
彼女は、そう告げるや徐に立ち上がり、部活があるからと言い残して学生会館の方へ歩き始めた。一方シュージは、そんな彼女に対しこれと言って気遣う素振りも見せず、再び文庫本に目を走らせていた。珂怜が少し寂しげにシュージを振り返った時、彼はそのことを感知して一瞬だけ目を上げ躊躇した。彼女に何か声を掛けなければ……。お互い十分に分かり合えている間柄だとしても、語らなければならないことはある。そして、彼は「珂怜!」と声に出しかけて、その名前を呑み込んだ。
シュージには、およそ分かっているつもりでも、その実は女心がまるで見えていなかった。珂怜は、そんなシュージの様子に安堵したわけではないが、密やかに微笑みを浮かべると、茶道部のある会館の中へ姿を消した。
戸外の陽射しが次第に和らいでいた。シュージは、夏から秋への季節の変化を、寝転んでいる芝草の上に感じ取っていた。真夏の陽光を浴びた地面から匂い立つあの草いきれが、今はどこかに失せてしまった。秋は一年の内で、地の草が最も草本来の匂いを放つ時候であろうと彼は思っている。
つづく