ドリンクバーがまだ世の中に浸透していなかった頃、僕ら子供たちにとってジュースは今よりずっと特別なものだった。缶ジュースは高いものだったし、家にジュースが置いてある事はまれだった。
自分は特に貧乏だったので、ジュースは駄菓子屋にある10円の粉のジュースがメインだった。
学校が終わってから、頭にあることは、ジュースを飲むことだった。
理科の溶解の実験でパインの飴を水に溶かしてジュースになった事さえ印象に残っているくらい。
「あそこの牛乳屋の自動販売機に40円ジュースがある」
「土曜日の部活は弁当+100円のジュースを買ってよかった」
などなど、ジュースに振り回されていたのだ。
高校に入りゴールドラッシュ的な事が起こった。
10円で250ccのジュースが買える店があるのを発見した。
駄菓子屋でもなく、商店でもない、元薬屋?と思えるような小さな店だった。
そこには、得体のしれないジュースが置かれていた。
普通のポカリスエットも80円ぐらいで置いてあり、
すべてがゲテモノジュースではなかった。
その、10円ジュースは2種類あり、青リンゴとジンジャーエール。
瓶入りの炭酸ジュースだった。
味はというと、おいしいとは言えない。なん10本も買って、部員に飲ませた。うまいという者は誰もいなかった。
その当時の想像では、何かの廃液?副産物的な汁をジュースにしたのだと思っていた。
そんな時期に、友人が10円モノをまた発見した。
「10円でコーヒーが飲める」
その場所は、自転車通学の途中にあるという。
「そんな店あったかな~」
と、俺は疑っていた。
そして、学校の帰りに「10円コーヒー」の店に寄った。
学校から15分くらいの場所だ。
たしかに、いつも通っている道に、それはあった。
元デイリーヤマザキのような感じの店構え。
「ここだよ」
と見ると。友人が言った通り、入り口の戸に、
「10円のコーヒー」と、雑な手書きの紙が貼られていた。
店のばあちゃんかじいちゃんが書いたのだろう。
「10円コーピー」
コピーじゃん。
10円のコーヒーがあると俺に知らせてから、
10円コピーが判明するまでの長い時間、
友人はずっとわくわくしていたに違いなかった。
夜に枕元にクリスマスプレゼントを置いて、
子供が起きてそれを見つけて喜ぶまでの時間。
それくらい楽しみなことを1人で楽しんでいたのだ。
---25年後---
「ついに10円コーヒーみつけた」
真っ先に10円コーピーの友人に知らせた。

