はじめての前立腺がん治療:Prologue
自分だけがどうして癌に・・ これは本当に現実なのか!?
癌かもしれない、もうこれだけで落ち着かない日々を過ごすことになる。検査、診断、検査、治療法の選択・・と進む。その先に完治があれば良いのだけれど、今の方向性が正しいのかさえわからない。
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前立腺癌は初めてだから・・わからない。
PSAって何、そもそも前立腺はどこに・・
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ま、だいたいそんな疑問から始まります。事前に前立腺癌のことを詳しく調べておいた方も希にはいるでしょうが、普通は健康な時に癌のことなど考えない。
多くの方は癌と告知されたこと自体初めて
もし周囲に医療に詳しい方がいたら、「前立腺癌などたいしたことはない、大丈夫」とか「転移が起きないよう早めに摘出」などの助言をもらうかもしれない。全くの間違いではないが、たいした根拠はない。しかし、はじめての癌であれば、これも信じてしまうかもしれない。
前立腺癌などたいしたことはない!?:
前立腺癌の進行の速さは癌の悪性度によって様々です。高齢でPSAが基準値を超え検査でみつかった場合、進行は遅い場合が多い。逆に若い方、50歳前後あるいは50歳代で癌が見つかる方は少数ですが、進行が速い癌である場合も少なくない。
前立腺癌の場合”PSAという優秀な腫瘍マーカー”があるため、初期の段階で癌が見つかる方が増えた。ホルモン療法という、癌を含む前立腺そのものを萎縮させ癌の進行をほぼ止めてしまう薬があることで、再発しても数年以上は普通の生活ができる。このため、根治治療を受けることができた患者の5年生存率は、ほぼ100%になる。このことを知って「前立腺癌などたいしたことはない」という発言になるのだが、これは間違い。
5年生存の中には再発後の治療を受けている方が多くいるが、ホルモン薬に抵抗できる能力を持った癌細胞にいづれ置き換わって、ホルモン療法の効果はやがて失われる。薬の交替、抗がん剤と進み確実に命の危機が訪れる。前立腺癌も他の癌同様危険なのだが、「ホルモン療法」が存在することで、それが見えなくなっているだけ、「たいしたことある」のである。
転移が起きないよう早めに摘出??:
前立腺癌に限ったことではないが、癌治療は、初回の治療法がすべてと言っていいくらいとても重要。良く調べて納得できる治療を受けないと、あとあと後悔することにもなりかねません。知人のアドバイスや、「再発したらこう」などと簡単に言う医師の言葉は鵜呑みにしないこと。再発治療を軽く考えてはいけない、初回治療以上に難しい判断が必要です。
転移 再発
癌に無縁だったころは、再発の言葉の重さに気づかなかった。「もし再発したら再度治療をすればいいのだろう」くらいにしか思っていなかった。ところが自分が癌になってみると、一番に”転移”、次に”再発”というくらいに気になる言葉だ。
この後の検査で転移がないなら根治治療が受けられる:医師からこう言われたが、転移があるかどうかで、今後の治療は全く違ったものになるため眠れない日々が続いた。私の場合その後「転移はない」という診断が出て本当にほっとしたが、この検査で「転移がある」と診断された方の辛い気持ちを想像すると、なんとも複雑な気持ちになった。
眠れない日々が続いた:転移がなければ根治治療が受けられると聞いて、少し大げさに言えば「生きた心地がしなかった」。今だからわかることだがグリソンスコアが8以下であれば、PSAの10や20で転移がみつかることはめったにない。これを当時知っていれば眠れない日々は不要だったのにと思う。
癌が転移していないなら、もし再発した場合でも再度の治療が可能かもしれない。しかし癌が転移して再発と診断された場合は再治療は難しい。最初の治療で癌を消滅させられれば転移は起きないし再発もない。このように”転移”、”再発”は治療の説明に頻繁に使われるが、患者にとっては耳にしたくないダメージの大きな言葉だ。
もうダメかと思った:仕事で大きなミスをして、それをとりもどそうとして懸命だった時、こう思ったことが1度ある。しかしその時は”命を失うわけじゃないのだから”と自分を励まし耐えた。しかし2度目の今回は本当に「もうダメかと思った」。今度は”命を失うかもしれない危機”だけにレベルが違う。悲しいとか苦しいとかではなく、深い絶望からくる脱力感だったろうか。
それでも、ネットを中心に治療法を調べてみると、医師の言う以上の多くの治療法があることがわかった、高リスクの癌を根治させるには、なんとなく摘出が最も良い手段のように思っていたが、必ずしもそうではない。放射線療法によっても根治が可能だと知って、ずいぶんと気持ちが軽くなった。