想像できない未来など「いらない」
癌治療なんだから体の機能を失ったり、合併症で辛い思いをしたとしても仕方がない、命が救われたのだから良しとする。この考え方もわからないではないが、”男であることを失い尿もれが気になるような生活はいやだ”、それでは治っても嬉しくない。私にはどうしてもそんな未来の姿が想像できなかったから「そんな治療は、しない」と決意。 摘出手術は受けない、そこから治療法探しを始めました。
治療が終わって根治できなかったら:
現実には、多くを失い辛い思いをしたからといって「完治」とは限らない。辛い思いをしたが「再発」という悪い方向に遷移し、合併症を抱えた上に”根治できるかどうかわからない”という状況になったら、選んだ治療が間違いだったと後悔するに違いない。
この治療法であれば”もし再発しても悔いはない”と思えるくらいの治療を受けたいと考えた。
癌の悪性度と進行度から、リスク分類を知る:
自分の情報を整理:PSAの推移の記録は重要です、穏やかな上昇であればそう危険はない。 グリソンスコアは1の違いでも大きくリスクが違うが、4+3か4+4までならそう心配はない。 さらにT分類によって、およその悪性度、進行度がわかります。これらが治療選択の重要な情報になります。
中間リスクまでしか対応できない病院は✕、高リスク以上にも対応できる医療機関へ
グリソングレードは、治療する医療機関が変わる時などに再評価され変更されることも珍しくない。さらにMRI、CTなどの画像検査でも癌が映るかどうかに確実性はないので、リスク評価自体が確実というわけではない。このため中間リスクと診断されても、その中に一定割合で高リスク患者が含まれていると想像できる。このような場合でも高い根治性を得ようとすれば、総合的に癌の浸潤リスクを推定し、必要であれば中間リスクに対しても高リスクに近い治療が可能な医療機関が望ましい。
高リスク前立腺癌 - 治療法の選択|再検討
どの治療法を選ぶか、適した治療法が人によって違うかもしれませんが、私は以下の条件で選びました。長期間経過後でも高いPSA非再発率が期待できるかの評価が難しい。
- 高リスクに対応:高リスクに対しても根治性の高い治療法であること
- 根治性:高いPSA非再発率であること(3-5年の非再発率だけでなく、5-10年以上の長期成績でも高いPSA非再発率が期待できるか。
- QOL:どこまで許容できるか(尿失禁 性機能障害 尿道狭窄、血尿、血便、尿道痛、二次がん
摘出手術
手術:ロボット支援摘出手術 ミニマム創 内視鏡 開放手術
△ 低侵襲であることから、多くの患者がロボット支援摘出手術、ダヴィンチによる治療を選んでいるが、前立腺全摘除術は周辺臓器とのマージンが非常に少ないため、被膜外浸潤や精嚢浸潤があった場合などでは癌を取り残す可能性がある。この点から浸潤リスクの高い患者(高リスク)の根治性は高くない。
摘出の場合、治療後1-2年内の再発は多いが、5-10年という長期間経過すれば再発はあまりない。
放射線、粒子線
X線照射:放射線外照射(VMAT、IMRT、トモセラピー
△ 外照射システム自体は非常に高精度とされる。しかし前立腺は時間経過とともに位置が変わる。このため生体との相対精度を向上させる方法がポイントとなる。短時間であれば前立腺の移動量が僅かであることから、VMATでは照射時間を2分に短縮することで精度を向上させている。外照射では、通常ホルモン療法を併用するため3-5年程度での再発は少ない、しかし照射できる線量に限界があるため、5年から10年以上の長期間経過後でもPSA再発がおきないかどうかに、やや疑問がある。
X線照射:寡分割照射(VMAT、サイバーナイフ
:高線量の照射が期待できる
△:長期ホルモン療法が併用されることが多い
?? 寡分割照射(VMAT: 高い根治性を期待できるとは思うが、詳しい情報を持っていないので評価できない。
?? 寡分割照射(サイバーナイフ: 高い根治性を期待できるとは思うが、高リスクには適用しないとしている医療機関がある。詳しい情報を持っていないので評価できない。
※2014の時点で寡分割照射についての情報にはたどり着けなかった。
放射線内照射:小線源療法(HDR
:高線量の照射が期待できる
△:長期ホルモン療法が併用されることが多い
△ HDR 高線量率密封小線源治療
△ HDR+外照射+ホルモン(tri-modality:
HDRでは高リスクが中心となるので通常トリモダリティ治療となる。多数の線源を一時留置し、前立腺内を移動させながら照射するという方法。この照射法では原理的にLDRよりもより広範囲に照射がされる。これにより被膜外浸潤、精嚢基部への浸潤にも対応しているとされるが、同時に合併症もより強く表れると思われる。ざっくりと強い放射線を短時間で照射するというイメージだろうか、精度の点でLDRには及ばないと思える。またHDRは高リスクに適した治療法であるとされるが、これは敵しているというより中間リスク以下では治療効果より、治療時の苦痛や合併症のデメリットが目立ってしまうためではないかと思われる。
粒子線:重粒子線 陽子線
△ 放医研関連施設からの情報では”治療成績は放射線外照射と同等だが、少ない回数で治療が完了するのがメリット”とされるが、これは従来の重粒子線施設の成績のことだと思われる。i-ROCKなど最新システムでは従来より高精度の治療が可能となっているはずだが10年を超える長期成績はまだ出ていない。最新の施設の実績と言う点では、これからに期待ということになる。
いまのところ外照射に対して根治性で優れるという報告があるわけではないので、この治療を選ぶことを躊躇する。
その他
超音波:高密度焦点式超音波(HIFE
✕ 低侵襲である点、2度目の治療が可能である点は良い。ただし、癌が小さい、辺縁部にない、など好条件が重なれば根治できる可能性があるが、多発性とされる前立腺癌において高リスクに対しては難しいと思われる。東海大学の治療が知られている。
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以下は評価せず、また別の機会に
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◇再発治療では、救済外照射、救済小線源、摘出、凍結療法、HIFE、継続的なホルモン療法、抗がん剤
◇研究段階なのは、PSMA-PET
◇?? 免疫治療などは、エビデンスはない
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実際には、「手術はしない」と決めるまでには数か月かかっています。医師の勧めに逆らってまで他の治療法を選んで大丈夫なのか、という大きな不安があったためです。手術療法を徹底して調べた結果、治療候補から外しました。その後さまざまな放射線療法を検討しましたが、最後に残ったのは小線源でした。
私が選んだ治療 小線源療法
LDR 低線量率密封小線源治療
✕小線源単独(オーソドックスな小線源-従来の治療 照射線量が低いと再発を起こす
小線源単独(高線量:中間リスクから高リスクの一部に適用される。トリモダリティの実績を踏まえながら、合併症を抑えるために開発されたもので、外照射併用に近い非再発率を目指すもの
小線源+外照射:中間リスクの一部から高リスク
小線源+外照射+短期ホルモン(tri-modality:主に高リスク、超高リスク。これまでの実績から最大限の根治性が得られると考えて良いが、合併症も強く表れる。
高線量の小線源単独治療は投与される線量は非常に高いが技術的に難しい。これに比べ外照射併用では小線源の線量を単独の2/3程度に抑え外照射の線量と合算することで高い線量を得るため、技術的な難易度が低く安全に高線量を照射できる。外照射では癌を根治させるのに十分な線量が照射されていない可能性があるが、小線源であれば必要十分な線量が高精度に投与できるという点でこれに決めた。単独か併用か、トリモダリティかは患者の選択ではなく医師側の選択であるから、勧めに従うべき。
従来の小線源療法は、低リスクに対する良い治療法であるとされ高リスク以上は適用外とされている。これに対し一部の医療機関では、小線源がその手法次第では優れた線量分布が得られることに注目し、研究を進め、現在では高リスクに対しても十分な線量を投与できるようになっている。しかし、現在でも”線量の低い従来の小線源療法”を行っている医療機関もあるため、そのような医療機関では十分な根治性が得られない。小線源では慎重な医療機関の選定が重要となる。
※ 小線源単独(高線量 : 低線量率の小線源なのに高線量の意味がわかりにくいかもしれない。各線源(シード)自体は低線量だが、留置された後の前立腺に対する積算線量は非常に高線量となる
再発しない治療法など「ない」
小線源治療では、被膜外浸潤を含めた局所再発ゼロが目標となる。局所再発がないなら転移は起きないし再発もない。このように局所制御率が100%でも、治療前の画像検査では発見できなかった微小な癌が存在し、それが時間経過とともに増殖しPSA再発を起こす場合がある。これはどの治療法であっても、一定割合で起こるもので、やむおえない。
外照射治療の場合は、治療後長期間経過後であっても少ないながら局所再発が見られる、つまり局所制御は完璧ではない。
局所制御が完璧と言えるような治療を受けることができれば、根治治療にそれ以上は期待できないのだから、腹をくくって枕を高くして眠れるだろう。
