磯崎にしては珍しく、会社を舞台にしたヒューマンドラマです。でもそこは、「日常の中の些細な『非』日常」を作品のモットーにしている私。主人公の男性も、ただの凡人ではありません。
当初のプロットでは悪者達をバッタバッタと斬り捨てていく、社会派アクションのような作風になる予定で主人公ももっとハードボイルドな感じでしたが。
あまりにも薄幸すぎるヒロインに感情移入しすぎてしまい、このような甘ったるい話に。そして主人公はただの変態になってしまいました。
作品のタイトルも、以前は『括弧仮』みたいでしたが、2021年の-rewrite-を機に現在のものに変更しています。
磯崎は普段、平日の昼間は会社員として働いています。その会社に以前、不思議な人がいたのです。
物腰は穏やかで頭の回転も速く、明るい性格でみんなに冗談を飛ばすような。もちろん仕事もデキるタイプの人。
でも出世欲がないのか、会社から嫌われているのか認められていないのか。全然昇進しないんです。それでも彼は毎日楽しそうに会社に出社していました。
いつしか彼とは違う事務所の勤務になってしまって。数年後、彼が退職していたことを知るのです。モノカキとしては妄想が膨らむわけです。
会社での業務、待遇、報酬に彼は満足していたのか。もしかしたら別の顔を持っていて、どこか裏で暗躍していたのではないか。だとしたら凡人には理解できない特殊な能力を持っているのでは……
彼に対する羨望にも似た妄想が膨張しすぎて爆発し、それが結晶化したのがこの物語。現代社会に対する愚痴も交えつつ、憧れの象徴のような主人公を作り上げたつもりです。
成長した靖行(やすゆき)達の養子、良一(りょういち)を主人公にした後日譚のようなスピンオフを、スター5つでご用意しています。
《スター特典》