いつか栄冠を | いっそ、汁になりたい。

いつか栄冠を


「さ、詐欺だぜ、こりゃ・・・」


急転直下、うきうきした気分は一瞬にして消し飛んだ。

これほど空気に溶け込みたい、僕を在らぬ事にしてくれと願った日はなかった。


事の発端はある友人からの一本の電話だった。


友人「なぁ、コンパこーへん?」

僕「い、行くに、き、決まっちょちょろーが!!」


僕は久しぶりのコンパという響きに

どこの方言かも微妙に分からぬ言葉を、
しかも若干、噛みながらアグレッシブに答えた。


まるで餌を数日振りに前にしたワンコのように
前のめりの興奮を隠し切れなかった。


大コ・ウ・フ・ン


「実親の葬式以外ならどんな事があっても行くぜ」とあまり格好良くない決意表明をする。

友人は僕の熱き魂にたじろぎながら電話を静かに切った。


翌日、僕は友人と会い情報収集に励んだ。

僕「おい、いったいどういう繋がりなんだい?」
友人「じ、実はネット関係なんすよ、旦那」

僕「うぬ・・ちょっと危険なフレイバーがするな」
友人「大丈夫やって。ほら写メもあるし」


携帯を受け取り見てみる。

僕「ほほぉ、悪くねぇ」
友人「お代官様、悪い顔をしてますぜ」
僕「ふははは、お主も悪よのぉ」
二人「ぶひゃひゃひゃはー!」


アホなやり取りである。
若さは無限の可能性を秘めているのだ。

写メとは言え面子の顔も確認できて僕は安心しきっていた。

「早くコンパの日が来ねぇかな」と・・・


季節は冬だったがもはや僕の心は常夏。
半そで短パンでも耐えられそうな気分。


いよいよ当日。
お胸がドキンちゃんな面持ちで待ち合わせ場所まで移動する。
「おっと、いけね。男たるもの紳士たれ」

僕は心を落ち着けて待っていた。


友人の携帯に連絡が入る。

「いよいよか!?」沸き立つ男性陣。

友人「迎えに行ってくるぜ」
一同「ご武運をお祈りいたします!」

ビシっと敬礼して友人を送り出す。

しばらくして友人が戻ってくる。



友人「す、すまねぇ・・・」

僕「い、いったいどうしたんだ!?」
困惑する一同。


そして後ろを見やる。


一同「なにににに!!」


そこには団子3兄弟ならぬ団子3姉妹が鎮座しておられた。

僕「ま、まさか・・・」
友人はコクリと頷く。

僕「今一度、写メを見せたまへ!」

友人はそっと僕に携帯を手渡す。

写真と実物を交互に見比べる。


僕「さ、詐欺だぜ、こりゃ・・・」


しかし僕は大人なので「取り敢えずミッションを遂行するしかねぇ」と
周りを促し、居酒屋へ移動する。


別に僕たちも格好いい訳ではない。
そりゃ格好よくないことぐらい僕だって自認している。

ただイケてない者同士というある意味、夢のコラボレーションにより
計り知れない相乗効果が生まれてしまう。


確実に空気が歪んでたね。


居酒屋に到着し、まず僕がした事。


そう、メガネをそっとテーブルに置いた。

おかげで景色がぼんやりして前に座る団子3姉妹が少し女性らしく見えた。

精神修行とも洗脳とも思われたミッションは約2時間で終結した。


・・・
・・・・・
僕「おい、これから反省会じゃ!」
友人「はい・・・」


そして夜は更けて行く。