シバのために泣くオレ53歳・・。 | (株)恋空Renkuu

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笑う、微笑む、爆笑、そして感動「(株)恋空Renkuu」の3次元的、ユーモア、毒舌集

シバ、ごめんよぉ

俺が中学2年生の時、田んぼ道に
捨てられていた、子犬を拾った

名前はシバ

雑種だったけど、柴犬そっくりで
オトンが、シバと名づけた

シバが子犬の頃
学校から帰ってきては
いつもかまっていた俺

寝るときも
ご飯のときも
起きる時間も
全部一緒だった

なんで
ずっと、そんな風に愛して
やれなかったんだろう

俺が高校にあがり
仲間もたくさんできて
悪さをするようになった頃

もう俺は、シバをかまうことは
なくなっていた

シバが遊ぼう、と飛びついてきても
「邪魔や!」と振り払った
世話は、いつしかオカンとオトンばかりが
するようになった

いつしか、シバも俺を見ても
尻尾さえふらなくなった

そして俺は高校中退
遊び呆けて家にも長いこと
帰らなくなっていた

そんなとき、携帯が鳴った

「シバが、車にひかれて...
病院連れてったけど
もうアカンっていわれた。」

オカンからだった

「はぁ?なんやいきなり
あのバカ犬が死ぬわけないやん。」

俺は軽く考えていた

「とりあえず、帰ってき。
今、シバ家に連れて帰ってきたから...」

正直、めんどくさかった

どうせもう、俺を見ても喜びもせんし
もしかしたら、忘れてるかもしれん

俺は重い腰をもちあげ
居座っている仲間の家を出て
実家へ戻った

玄関先に繋いでるはずの
シバの姿はない
家に入ると、
俺は、目を見開いた

布団のようなものをかけられ
ぐったりしているシバ

そして、オカンが優しく体を撫でていた

「リードちぎって脱走しててん
そんでひかれよったらしい...
近所の中井さんが教えてくれたわ。」

オカンの目には、涙がたまっていた

俺の体に、じっとりと嫌な汗がにじむ

「最初はなんでシバが
脱走したんかわからんかったけど...
中井さんが、青い原付を
必死に追いかけてたって...
そんで、後ろからきた車に
ひかれたんやって

そう教えてくれたわ。」

俺はその言葉に息をのんだ

青い...原付...

俺の原付も、同じ青色だ

「多分、よその人の原付を
あんたやと、思ったんやろなぁ。」

オカンの目から、涙があふれた

そして、俺の目にも、気づけば涙

初めて、シバを拾ってきた光景が頭に浮かぶ

シバの横へ、俺は腰をおろした

シバが、痛々しいからだを
少し持ち上げる
すると...
フンフンと鼻を鳴らし、尻尾をふった

俺は、何かがはじけたように
泣きじゃくった

シバを拾った、あの日

最後まで面倒みると、誓ったはずだった

ずっと、こいつと生きていくと
決めたはずだった
シバがいつか死ぬときは
笑顔で送り出してやろう
だから、それまでいっぱいの
愛情で接してやろうと...

あの頃、誓ったのは自分自身だったのに

「シバ、ごめんよぉ
俺、いつもお前のこと無視して...
お前はいつも、俺のこと見てたんやな

許してくれや、シバっ...」

そう言ってシバの体を撫でた

ペロペロと、シバが俺の手をなめる。

それと同時に、俺の手につく...

シバの血

オカンも、声をあげて泣いていた

「いつもあんたぐらいの男の子が
家の前通るたび、シバ
ずーっと見つめててん。」

オカンの言葉が
さらに、俺の涙をあふれさす

「シバ、逝かんでくれやぁ
また、一緒に遊ぼうやぁっ・・」

視界が、涙でかすんだとき、
シバが、キュンキュンと声をあげた

そして、頭を俺の膝の上にのせ

まるで
俺に
「生きたいよ」と言ってるようで...

涙がとまらんかった

代わってやりたかった

そしてシバは、そのあとすぐ

息をひきとった

シバが死んで、6年

今でも、シバの命日には
シバの大好物だったササミを
玄関においておく

たまに、猫がつまみ食いするけど
優しいシバのことやけん
黙って見とるんやろな...

シバ

お前のおかげで
自分の愚かさをしった

ありがとう

ほんまに
ありがとう。。。

そして、ごめんな

大好きやで、シバ

俺がいつか死んで
そっちに行ったら

また、俺の愛犬になってくれ

そんときはもう絶対
そばからはなれんから

約束するよ

今度はもう
自分自身に嘘はつかん

今、これを書いてる俺...

フ、と目に手をやる

気づけば、涙