■圧倒的に試合を支配して勝つ“理想のサッカー”


リーグ戦第22節、我がチームはSDカストージャに0-1で敗戦した。これは今までの敗戦と異なる。。それは内容だ。わがチームのボール支配率はおそらく75%近くに達していたに違いない。普段の試合ではまずお目にかかれない、圧倒的な数字である。


 ボールを配率が高くても意味がない。ゴールを決めなければ勝利はない。サッカーの勝ち負けはボール支配率ではなくゴールの数で決まる――当たり前だ。

 しかしゴールを多く決めるならば、ボールを支配する以上の近道があるのだろうか?

サッカーには勝利の論理がある、と私は思う。私の勝利のためのプロセスは、単純極まりない。


 勝利するにはゴールを多く決めることだ

⇒ゴールを多く決めるためには多くのシュートをたくさん打つ事だ

⇒シュートをたくさん打つには多くのチャンスを築かなければならない

⇒多くのチャンスを築くためにはくためにはボールを支配することだ。

よって、『勝つためにはボールを支配することだ』という結論になる。
 自分のチームは、この勝利の論理に従って設計されています。


 短いパスを後ろからつないでボールの支配時間を長くし、攻撃する時間を長くする。相手にボールを与えず、シュートチャンスすら作らせないで、圧倒的に試合を支配して勝つ、これが自分の描いている理想のサッカーとなっています。


その理論を否定するかの様な試合だった。

枠内シュートは13本。チャンスの山を築き、シュートの雨を降らせ、コーナーキックも10回以上蹴っても点にならない。相手キーパーの好セーブにことごとく止められ、ポストやバーにも嫌われた。


一方相手のシュートは2本。枠内シュートが1本でそれを決められた・・・

 

■ボールが回ってこなければ、Cロナウドだってシュートは打てない


 ここまで書いたところで、「ボール支配を目指すサッカーは効率が悪い。勝つためには決定力を上げるのが近道だ」と考える人もいるかもしれない。
 しかし私はこう反論したい。「では、決定力を上げる方法を教えてほしい」と。

 決定力の有る選手、無い選手というのは、厳然として存在する。
 例えば、私はチェルシーのフェルナンド・トーレスは決定力が無いと思う。世界有数のテクニシャンでゴール前のでの仕掛け、トラップ技術、キーパーだって簡単に抜ける事が出来る。しかしなぜかゴールを前にするとミスをする。彼をゴールゲッターに変身させるにはどうすればいいか? 

 私のチームが、相手チームよりも決定力で劣るとは思わない。現在リーグ得点王が在籍しているチームだ。が、仮に劣っているとして、勝つチームを作るために監督はまず何をすべきか?
 それはやはりボール支配率を高める戦い方を採用することだと思う。決定力不足を補うには数多くゴールチャンスを築くしかない。そのためには、繰り返しになるが、ボールを支配するしかない。

 まだあなたは納得できず、こう指摘するかもしれない。「ボール支配は、必ずしもゴールチャンスに結びつかないのではないか」と。
 その通り。『必ずしも』ゴールチャンスに結びつかない。

 しかしC・ロナウドだってボールを無ければシュートは撃てない。イニエスタやシャビといえどボールが回ってこなければスルーパスも出せない。サッカーにおいては攻撃――つまりボールを支配すること――は最大の防御なのだ。ボールの支配は、負けない論理でもあるわけだ。

■勝利の論理に則ったチームの大敗は、論理の間違いか、それとも……


 と、ここまで読んでも合点のいかない人は、最後の反論が残されている。「それでも、あなたのチームは敗北したではないか」。
 おっしゃる通り。勝利の論理に則ったはずの私のチームは、敗北した。
 なぜ負けたのか?
 その答えは………………運だ。

 私は勝因や敗因を運に求めるのは大嫌いだ。
 勝負が時の運なら監督はいらない。勝負に運はつきものだが、その不確定要素を最小限に抑え、勝利のためのより確実な道を模索するのが監督の仕事だと思う。『ボール支配=勝利への近道』という私の論理も、そんな模索の結果生まれたものだ。

 相手チームのキーパーは素晴らしかったし、少ないチャンスを得点に結びつけたのも見事。私のチームには幾つかのミスが出た。それは敗因の一つだし、今後修正すべき課題だ。下位チーム相手で気の緩みがあったのも一因かもしれない。

(もしくはコナミのイタズラか・・・)

 もし、運でなかったら?
 もし、あんな試合が100試合に一度でなく、何度も繰り返されたら?
 それは、私の勝利の論理が間違っていたということだ。その時は、「ボール支配は敗戦への近道だ」と訂正したい。


参考 木村浩嗣 


※フィクションです