悪霊 其の壱 | 日々棲む世に

悪霊 其の壱

前もって言っときますが、このブログは私の思い出なので、等身大の実話しか書きません。


イカレテルと思うのも良しだと思うし、それはお任せします。


では、悪霊の話をしたいと思います。




私はもともと、霊感とかは無い方だと信じていた。


霊魂自体を否定的に考えた事はなかったが、単純に私には縁の無いものだと思っていた。


見える見えないの差はなんなのか、そんなの解らない。


ただこの歳になって、 本気で見えたとか、こんな事があったなどという嘘を作る方がメンドクサイだろう。


だからそう言ってる人は多分本当なのだと思っていた。


今までの経験として、実際に金縛りも経験したり、ベットの周りを誰かが歩いてる事もあったが


いまいち夢との区別がついていないし、自分の意識の事になるとちょっと自信がない。


こんな私が実際にいると思うようになったのは、二十歳を過ぎてからでした。





当時、私の家は揉めていた。


原因は親父が急に上海人の嫁 をもらって来たからだ。


親父からのメール  「上海子猫が家に転がり込んできたので皆さん見守って下さいね」


こんなふざけたメールが来て、姉と私と当時の彼女の三人は困惑気味だった。


偽装結婚してきたとか、家について一週間で家のカギを紛失したとか。


何かと挙動が怪しい。姉なんかはもう爆発寸前だった。


私たちはこの疑惑に決着を付けるべく、実家へと乗り込んだ。


結果は予想通り修羅場になってしまった。


親父はキレて、姉は泣き叫び、上海子猫は慌てふためき。私も相当に怒った。


先に相談していた、この手の問題に詳しい書士さんに


パスポートのコピーでもなんでもいいから あれば真偽に近づける。という事でしたので、


どうにかパスポートの写真を撮らせてもらった。


今考えたら、なんてしょうもない事をしたのかと思う。


しかし、その当時の私たちの価値観ではそれが正義だと信じていた。


親父はもう二度と来るなと一蹴。姉は号泣。



この出来事によって残ったものは、修復出来るかわからない程の家族の亀裂と、


怪しいパスポートのコピーであった。



号泣している姉をつれて、外へ出た。


時間も遅く、姉の家は実家から離れている為、今日は私の家に泊まるという事にした。


家に帰ってからも重い空気は変らず、姉はシクシクと泣いていた。


私と彼女はそんな姉を気遣って、根拠の無い慰めをするしかなかった。我々だって不安なのだ。


夜も更けて来たので、今日は寝ようという事になった。


私はその当時IT関係の営業をしていたので朝が早かった。


ワンルームのマンションにはベッドは一つ、 私は下に寝て、姉はベッドの奥、彼女は手間で寝る事にした。


最初は姉も中々寝付けずにいたのか、たまにすすり泣く声が静かな部屋に響いていた。




それからどれくらいたったのだろう。


私は不思議な夢をみていた、そこは幻想的な世界で、誰かがいたようないないような。


その夢の中に急に言葉が入ってきた。 「・・・しよう」


その瞬間、私のみぞおち辺りにズシンと急激な重みを感じ、慌てて声を出して眼が覚めた。


まだ意識は朦朧としており、うまく起き上がることは出来なかったが、


明らかにいつもの部屋とは空気が変っていた。重く、異音が頭の中で絶えず鳴っている。


異音は電子音のノイズのような感じで、たまに波長があったように大きくなり、また小さくなっていく。


目をつぶると、まるでその音は部屋のなかで動き回ってるように右往左往しているような気がした。


・・なんだこれは。


起きてるか分からないが、この異変を知らせようと彼女に声をかけてみた。


そうすると、彼女は起きていて返事をしてくれたので聞いてみた


「ねぇ、なんかこの部屋今変だよ」


「・・・気のせいよ。明日早いんだから寝なさい」


彼女は前々からすごく第六感が強い人だったので、その子が何もないって言うんだから安心だろう。


そう思って気にせずに寝る事にした。


しかし一向に部屋の空気は戻らないし、部屋のいたるところで 物音がしている。


「ねぇ、へんな音してない?なんか変だよ」


もう一度確認した。


「・・・気のせいだってば、いいからもう寝なよ。」


あんまり言うとしつこいので寝る事にした。


目をつぶってると 部屋の中のノイズが女性の笑い声へと変って聞こえてきた。


それはとても爽やかな笑い声で、


「・・・・フフフフフ・・・・フフフフフ・・・・・・」


私はなんだかその声がとても心地が良く聞こえてきて、まるで子守唄のような錯覚に陥っていた。


そしてそのまま意識が遠のいていく最中、


その笑い声は爽やかとは打って変わって、 悪意に満ちた物凄い声へと変っていった。


これは文字では書けないです。 ただ、もう二度と聞きたくないです。


意識が遠のくギリギリの所で私は恐怖を覚え、そのまま気絶するように眠ってしまった。


そして朝を迎える事になる。




一度、時間を遡り、今度は彼女の視点からこの時部屋で何が起きていたのかを書こうと思います。



すすり泣く姉に気を使いながら、同じベッドの上で身を小さくして眠りにつこうと考えていた。


しばらくすると横で寝ている私が急にうなされ出した。様子が変だと思い


ふと、ベッドの下で寝てる私の方に視線を移すと、


凄い形相をした女性が私の腹部に乗り その場に屈んで彼女と姉の寝ているベッドの方を見ていた。


一気に部屋の空気が重く、今までに感じた事の無い恐怖が彼女を襲った。


この世のものではないと一瞬にして悟った。


曰く、色んな体験してきたけど、あんなにはっきりと認識出来たのは彼女も初めてだったらしい。


服装まではっきりと見えたらしい。20~30代 時代は現代 T-シャツのような軽装。


急いで顔ごと背けて、姉の寝ている方を向いた。姉はまだ寝ている。


しばらくすると、私が話しかけてきたそうだ。


「ねぇ、なんかこの部屋今変だよ」


私の朝が早いのを気を使って、ここで怖がらせても仕様が無い、ここは誤魔化そうと決めたらしい。


「・・・気のせいよ。明日早いんだから寝なさい」


その女の動向に意識を集中した、どうやら部屋を物色しているらしい。


彼女はその女に接触を試みる事にした、といっても話しかけるのではなく、


自分の思いを相手にぶつけるらしい。私には未だにそういう事は出来無い。


(あなたは誰?何しに来たの?)


通常何か言いたいことがあれば、この呼びかけに反応して何かしらの訴えをしてくるらしい。


しかし、反応は全く無い。ただ、重く湿った誰かに憎しみのこもった空気が部屋中を覆いつくしていた。


また私が話しかける。


「ねぇ、へんな音してない?なんか変だよ」


やはり彼にも聞こえているのか、しかしここで言っても私がどうこう出来るレベルじゃない


「・・・気のせいだってば、いいからもう寝なよ。」


そこで発想の転換、一切意識するのを辞める事にした。


どうせ一過性の悪霊だろう、こちらも意識しなければそのうち何処かへ消えるだろう。


目をつぶり、一切の感覚に蓋をした。 すると、ポタ、ポタ、と彼女の肌に何かが降ってきた。


びっくりして、ゆっくりと落ちてきたものに触った、それは水分だった。


これは非常におかしな話で、私の住んでるマンションは4階立ての2階にある。


いままで、水道トラブルなどは一切起きた事はない。


しかし、現実に今自分の上から垂れてきてるものは紛れも無い事実であった。


彼女は頭から布団を被り、この恐怖が去ってくれる事を、ただ祈るしかなかった。


そして朝を迎えた。




ちょっと長いのと、書いてる事が鳥肌たつほど怖いので、続きは近々載せようと思います。