自虐と自信

 卒業を祝う会で、U先生が「恥ずかしながら自分は教員になるつもりはなかった」と若い先生たちを前に故郷を出てから東京で教員になるまでの身も蓋もないいきさつを自虐的に話していた。ちなみに学年主任のU先生は、卒業式前の打ち合わせでも「本日はみなさんに大変ご迷惑をおかけします」と謝罪から入っていた。

 

 でも自分をおとしめて自虐的なことを口にする先生は意外と生徒から人気がある。先生が自分のことを否定的に言うと、生徒は「そんなことないよ」とフォローする。そういう生徒ほど高圧的に出ると猛烈に反発する。それは目に見えない上下の関係を敏感に感じ取っているからかもしれない。自己肯定感の低い生徒ほどそれを強く意識している。

 

 どんな人でもどんなことでも必ずうまくいくという保障はない。何かを頑張ろうとするときにたぶん大丈夫だろうという根拠のない自信が必要だ。でも、小さい頃から「ダメだ、ダメだ」と否定的な自分を上塗りされてきた子供は、今度こそは頑張ろうとしても、どこかでまたきっとダメだろうという根拠のない自己否定が頭をもたげてくる。だからいつまでも自信を持つことができない。根拠のない自信は、根拠なくほめられるか、自虐的な他者をフォローすることで身に付くのかもしれない。