エスカレーター思考

 

 東京では中学校から私学へ行く子どもが急増ている。私学の密集する都心で顕著な傾向がある。その背景は高校の授業料無償化が大きい。さらに国も大学無償化の検討を始めている。つまり中学から大学までのエスカレーターに我が子を乗せたいという親心がその背景にある。このエスカレーター思考は昔からあったが、莫大な授業料の問題があり、経済的な理由で躊躇する家庭も多くあった。そのタガが外れたということである。一方、都立高校は年々倍率が下がり、定員割れの高校が増えている。その中で、中高一貫校や小中高一貫校の人気は驚くほど高い。まさにエスカレーター思考を裏付ける現象である。

 たしかに今や駅や公共機関ではエスカレーターやエレベーターは当たり前になっている。お年寄りや障害のある方にはなくてはならないバリアフリーである。一方で、若い人の成長にとって、自力を極力使わないアシストが長い人生にどのような影響を与えるのか、人生がエスカレーターの動きのように右肩上がりに順調ではないことを考えると手放しでは喜べない。ちょっとした段差に弱くならないか心配だ。

 都立高校が今後どうなるのか。エスカレーターやエレベーターが当たり前の時代に「段差を乗り越えて社会につながる」そんな力を育む高校があってもいいのかもしれない。