学力難民

 

 難民問題で必要なのは、三つの『リスペクト(尊厳)』です。まず、家を追われて最も貧しい境遇にある人々を守らんとする国々の献身に、  尊厳を。次に、各国の協力体制の下で難民に寄り添い、第一線で人道支援に従事する者たちに尊厳を。そして一番大事なのは、難民に対する尊厳です。

 2000年 国連欧州本部会議における緒方貞子さんのスピーチより

 緒方貞子さんの言葉で考えた。日本では難民を「助けてあげる」という発想になりがちだが、自分の手に負えない原因で不幸な境遇に置かれているのだから難民の人権は絶対に尊重しなければならない。「それは近代国家の義務ではないか」と緒方さんは言っている。日本初の女性国連公使となった緒方さんは、国連の児童基金執行理事会議長、難民高等弁務官などの要職を歴任する。防弾チョッキを着込み、イラクやサラエボ、ルワンダなどの紛争地帯へ率先して出かけ「現場感がないと人は説得できません」と言って現場主義を貫いた。

「学力難民」これは私の造語だが「学び直し」の学校に集まる生徒の多くが一般的な高校の学力のルールや基準の中では生きづらく、結果的に不登校や転退学になって世の中を漂流している。大人になってからもずっとです。そして、その多くが自分の手に負えない原因で不幸な境遇に置かれている。

 

 緒方さんの考え方を「学び直し」の学校に置き換えるなら、まず、そういう生徒をとことん面倒見る「学び直し」の学校へのリスペクト、次に、最前線で生徒に寄り添い面倒を見ている教職員へのリスペクト、そして一番大事なのは、自分の手に負えない理由で困っている生徒へのリスペクト、この三つのリスペクトが根底にないと、「学び直し」の学校に集まる生徒は救われない。