これは私の想像ですが、シャネル展のように保管してある昔の服の展示はわずかで、ほとんどは昔のデザインを185cmに合わせて作ったレプリカではないでしょうか、ところどころ今風に微修正して。

そう考えると、服飾歴史展としてはちょっと物足りないし若者に誤解を招く。

ファッションの歴史って、自分が生まれる前のものは「この襟は一周回って最近また流行っている」「今はこんな細かな刺繍をやる職人はいない」と感心し、自分が生まれてからの時代は「ミニスカ、流行っていたよね、園長先生もミニスカはいていた」「こんな厚底靴、今はないね!」とツッコむところが醍醐味ではないかと思いますが、どうでしょう。

 

有名なモンドリアン・ルック。着ようとは思わないが…。この上下2点はホンモノだと思う。

刺繍が見事なジャケット。他にも刺繍に凝ったニットカーディガンが何点か展示されていました。21世紀初めごろ、きらびやかなジャケットに黒いロングスカートが、マダムの結婚式ゲストスタイルの定番でしたね。

 

サンローラン自身の人生はそれほどこの展示では表れていないが、以前映画で観ました(ピエール・ニネ版)。私生活では男性の共同経営者が恋人だったそうだが、あの女子力高い服のデザインの源泉となる、彼がミューズとして溺愛した女性モデルが何人かいる。仕事と芸術のフィルターを通しては、両方愛せる人だったのでは?と勝手に想像しています。

 

今思えば来日していたときか、朝日新聞夕刊にインタビュー記事が出ていて「なぜ結婚しないのか」という、今の朝日なら絶対しない質問に「結婚すれば子どもが欲しくなるし、子どもがいれば夕食を共にしたいと思う。そうなると仕事に全力投球できないから」と答えていたのが印象的でした。今思えばゲイだった事情もあるのかもしれないが…天才は奥が深い。

 

次に服飾展があるなら森英恵かもしれないが、やはり私たち世代のOLがボーナス後に、またファミリーセールなどで「ほしい!」と買いに走ったブランドは、イヴ・サンローランがいちばんだったのではないかとしみじみ思います。