FBで触れた、会社員時代に担当した広報誌の特集について。約1年間、京都や静岡、大宮駐在の研修を終え、家電を担当する事業部の販促部門に着任したいそくみ。製品カタログから広報誌、テレビコマーシャル、冠イベントなど、それぞれの製品事業部や宣伝部・広報部の間に立つ部門で、女子総合職が配属されがちなセレクトでした。

当時、系列電気店や量販店のコーナーに置く「スイートホームライフ」という薄い季刊誌を発行していて、表紙を福山小夜さんに描いて頂いていました。クロワッサンじゃないが”上質で豊かな生活”をイメージし、最初のほうに読み物特集があり、新製品紹介などに続く。調理家電と料理のページでは辻クッキングでの撮影の立会いなどもあり、本物のコーヒーは油が浮くので撮影にはしょうゆを使うと知った、楽しい思い出です。

 

編集者は40代と30代くらいの女性2人で、ある秋の特集号案として

「蕗谷虹児」を持ってきた。大正から昭和にかけての美少女画で有名な挿絵画家らしい。新潟県新発田市の蕗谷虹児記念館を訪ね、その人生と作品を解説する企画。しかし一緒に担当しておりいそくみの教育係でもあった一回り上の男性社員(早稲田でした)が

「フキヤコウジって知らないなあ。竹久夢二なら僕もわかるけどね、全国の電気店に置く冊子なんだからもう少し認知度がある人を取り上げたら」とダメ出しした。年上のほうの女性編集者が

「私たちの世代はわかります。今はあちこちで取り上げられている画家じゃないからこそ価値があるんです」

普段は穏やかな女性なのに、ここは強気に出た。すると男性社員も反論する。

いそくみも、負けずに虹児推しして大バトルに(実は知らんけど)。家に帰って母親に聞いたら

「知ってる知ってる。眼の大きな女の子の絵で、中原淳一と一緒に『ひまわり』って雑誌を作っていて、中原淳一の絵のイメージに似ているとデビューしたのが浅丘ルリ子で・・・」

と、次々に話が出てきたので、これはいけると思った。蕗谷虹児の端正な風貌もマダム向け。その一方で、今度2人目の子が生まれるという先輩社員は一番家電にお金を使う世代で、彼の感性も無視できないような気がした。しかし竹久夢二や藤田嗣治は家庭画報で特集すればええやん。

この結末、先輩社員が最後に

「家電は主婦層がターゲットだから、女性3人がやりたいというのなら」と、折れてくれました。

その号は通常より多く部数が出たそうです。

 

自分が知らないからNG…ではなく、まずはアンケート取って、出来ればターゲット層の意見を聞いて決める。今に続く自分のマーケティング手法です。

「コムロさん(旧姓)が推してくれたから」と編集者たちが喜んで、福山さんの絵をプレゼントしてくれたと記憶しています。福山小夜は後にシルクスクリーンをメインにして画風を変えたので、この時代の癒し系女性像パステル画はネットで検索してもほぼ出てこない(デジタル社会の盲点)。

 

ちなみに、今80-90年代のイラストレーターを特集するとしたらどなたが思い浮かびますか?