ご近所のマダムから

「知り合いからたくさんドレスを預かったの。お仕事が終わったら見に来ません?」とメッセージが。リサイクルというよりは毛皮や総絞りのお着物や舶来のアンサンブルなど、良いものを沢山扱う人だ。伊勢丹ではワンピースをドレスというから、フォーマルなワンピースのことだろう…と思ってお伺いしたら、本当にロングドレスがいくつもかけてあった。

ロングドレス、着ていく場所がないっす~。それでも勧められるままに、グレイ系の、チュール地に一面スパンコールで刺繍したドレスを着てみたら、ニット素材で体にフィットし、露出も控えめでなかなかいい。

「女たちのジハード」で地味なOL康子が、デパート(おそらく東急本店)でイタリア製ドレスを試着した自分に見違える…場面を思い出しました。(37万円の超高級品で、恋人への腹いせに衝動買いするという設定だったが)

シンデレラは舞踏会に行くのにドレスがないと嘆いたが、私たちバブル期OLは「ドレッシーな服もジュエリーも持っているが着ていく場所がない」のが悩みの一つ。政治家のパーティはスーツ、後輩の結婚式は装飾多めのスーツ、親族の結婚式はジバンシイのリトルブラックドレス、観劇はヴィンテージのワンピで何とかなってしまう。時代は一億総カジュアル。ロングドレスなど、着る機会があるとすれば息子の結婚式くらいしか思い浮かばない。結婚披露宴は常に女のためにある。

一着ぐらいあったほうがいいのか、写真を実家の母に送ったら「大臣になるの?」・・・そう来たか。

その母も、昔大使館のパーティに夫婦で招待された時に、海外慣れした友人に「風呂敷でもいいから足元までかくせ」とアドバイスされ、黒のロングドレスを作ってたよなあ。ドレスコードというものがあった昭和がなつかしい。

「これから先、着る機会も出てくるから一着くらい持っておいたら。機会は作るものよ」

マダムの言葉に押されてお譲りいただき、ドレスは自転車のかごに積まれて我が家へ。あまり齢をとるとグレイも地味すぎてしまうので、還暦までに着られるといいですが…ロングの適正丈だという床につかないぎりぎりで切るか、母が言うように“普段着られるひざ下丈長めくらい”で切るのが現実的か。一度はロングで着たいものです。