男性社員がTシャツ出勤でよくなっても、女性社員の露出度にはまだ厳しい会社も多いと思います。平成の丸の内では肩・ヘソ・胸の谷間出しはNGでしたね。
このワンピースは5年ほど前に買ったイタリア製。地味なグレンチェック、薄地のシルクウールで夏の仕事着に重宝なのですが、肩ストラップが水着くらいしかない。JKを脱げないのが苦痛でした。
思い切ってレース生地でフレンチスリーブ付けてしまおう。
誰かに仮縫いを手伝ってほしい…実家の母は洋裁が得意だが、この暑さでは呼べない。思い出したのが、駅前の演説時に声をかけて下さったM夫人(85)です。ほとんどノーメイクだが、いつもセンスの良いブラウスやワンピースで「私は杉野(現・杉野服飾大学)で師範まで教わりました。この服も自分で作ったのよ」といい、うちの事務所にも自作のクッションやエプロンを下さったことがある。
お声をかけたら「独りで高校野球観てるだけですから、いらっしゃい」と。事務所の並びのマンションにお邪魔しました。
出来上がっている服につけるので、着たまま糸印つけてもらって立体裁断で、と考えていたのですが、M夫人は新聞紙を持ってきて「さあ、型紙を作りますよ」という。えっ、そこからですかい?!杉野ドレメ式は甘くなかった。
インターネットで日暮里の生地店から取り寄せた黒のレースの端切れを広げる。母親が、「私の式服を作った余りがあるわよ」と写真を送ってくれたのだが、ありがちな黒薔薇の柄。グレンチェックなので幾何学模様のが合うだろうと、ネットで選んだのです。
「いい柄ね、これはオカダヤで買ったの?…まあ、インターネットで生地が買えるなんて便利な時代になったわねえ」
オカダヤもマルナンも母のお供で行ったことがあるが、杉野や文化服装学院の学生で賑わっていた記憶がある。うちの母よりもっと前から、M夫人はオカダヤに出入りしていたのでしょう。
「結婚してからは、主人の仕事で海外についていって、イギリスはリバティ、フランスは…あちこちでたくさん生地を買ってきたものよ」
リバティで目を輝かせて布地を選んでいる、若い頃の夫人が目に浮かぶようです。30年くらい前なら、ちょうど自分もイギリスのサマースクールに行っていたな。いそくみはDillonsという書店(買収され、もうないらしい)が好きでした。
思えば駅前の演説で知り合った老婦人と、話せばいろいろ共通点があり、こうして洋裁を教わっているのも不思議なことです。
(続きはお盆休み後に)
M夫人の針山コレクション。左は、刺繍教室の友人の作品。右に見えるのは陶器の靴に針山が入っているもの。
一番のお気に入りは中央、ボロ市で買った、竹の節に針山が埋め込んであるもの。枝の部分が持ち手になる。