両親のスペイン旅行土産だった、バブル期の革コートをお直しに出した話の続き。

それから数日後、成城のテーラーを紹介してくれたおじさまが「男物と女物は仕立てが違うよね…うちの奥さんは自分とは別のテーラーを使う」と言い出す。

「えーっ?紹介されたお店にもうコート出してしまいましたよ!」選挙はがきを数えていたので、途中で数がわからなくなるほどショック。

「大丈夫だよ~彼が出来ると言ったなら。腕は確かだから」

おじさまは笑って言うが、田中美奈子(あるいはジャミラ)が高橋ジョージのように仕上がってきたらどうしよう?

やっぱりよく調べてから出すべきだったなあと思い悩んでいたら、程なくお店から「仕上がりましたよ」と電話が。気になるのですぐに自転車で出動。

 先日この道を通ったときにはまだ蕾だった家々の桜が満開に咲いていた。

 お店に着いたら店主さんが、

「肩、袖、脇をつめて、だいぶ細くなりましたよ」

ハンガーにかけてあったコートを渡してくれた。その軽さに驚きました。

着てみるとすっきりしたラインになり、前と全然違います。これならおかしくない。細く見えても、ジャケットの上から着られるのがありがたい。

※これはジャケット脱いではおっています。

◆お直し前。極端な逆三角シルエット。

 

私たちの親世代(70代~)にとって、毛皮やレザーコートはとびきりおしゃれで高価で、ステイタスともなるアイテムだったはず。ところが昨今はエコや動物愛護の精神から身につけなくなり、つい最近、古着屋で上品な総ミンクのハーフコートがたった5000円で売られているのを見たことがある。前述の理由で子供世代が欲しがらないので、手放したのでしょう。

しかしミンクやきつねにしてみれば、どうせ服にされてしまったならどんどん活用してあげた方が供養になるはず。いそくみもここ数年、母が大事にしていた銀ぎつねの襟巻を「使っていいわよ」と預かっています。初めて「これをして行きなさい」と借りたのが成人式の日で、母の成人式の振袖を仕立て直して着て、その襟巻をした思い出が。大人になった記念のような品ですが、確かに今は流行らない。やれフェンディやグッチが毛皮の使用を止めるのという美談を意識しつつも、「お前はもう死んでいる」とつぶやきながら、冬の季節に一回は一緒にディナーに連れていきます。

 

話は戻りますが、お直しに出したのは鞍橋、成城学園の校門前の道を北に突っ切って祖師谷公園の手前にあるテーラー小畑。今回は革コートの肩、袖、脇つめで2万円也。