朝晩は少し肌寒い。アンティークの海外サイトで夏のセールに買った長袖のナイティが使える時期になりました。好みから言えばもっとシンプルで細身なのがよいが、この細い細いピンタックがフリルの内側まで重ねられた技巧の見事さに感心して買ってしまいました。下までボタン留めで、開ければはおりものとしても使えるデザインです。

この時代は全てお仕立物だそうで、これはとても裾が長く手も長い。キャサリン妃のような長身でスタイルのよい女性のために作られたものだったことでしょう。

寝室に入ったらメイドが何もかもやってくれる身分ならいざ知らず、寝る直前に

(あっスマホのチャージ忘れてた)(明日のダシをとっておこう)

ドドドと階段を上がり降りするうちにスソ踏んづけて転ぶと危ないので(呪いでも何でもない、自業自得)、迷ったが、足首が見えるくらいまで丈をつめました。

お仕立て服の多かった時代は、手のかかったプリーツや刺繍をほどこしたもの服がたくさんあった。数学と洋裁の得意な母は一時、正確無比なプリーツの服を自分用に仕立てるのに凝っていた。小学生の私たちが布団に入る頃、ミシンに向かっていたっけ。若草色のクレープデシンで、ウェストから下が1センチ刻みの総プリーツの袖なしワンピースがすてきで、いつか貰おうと思っていたのだが、ある時聞いたら
「あれね~うちに来る銀行の担当の女の人にあげちゃった。喜んでいたわよ」
なんと、「赤い月」か。自分の子より若い京大卒のイケメンくんや、安倍政権の後押しで管理職候補になるだろう銀行女子を母は可愛がっているのです。
しかしそれは微妙だなあ。
ディオールやシャネルなら(あるいは母が森英恵なら)ともかく、顧客の若い頃の手製の服なんて本当に着てくれるのかしら。

古い服は「それいただき」と意思表示しておかないと、持ち主はどんどん処分してしまう(と朝吹登水子も書いていた)。

そう考えると、このナイトガウンも
「ええっおばあちゃん、あれリサイクルに出しちゃったの?私がワンピースに着ようと思っていたのに!」と絶叫しているスペイン娘が、海の向こうにいるかもしれない。