有吉佐和子没後30年企画とやらで、新聞に紹介されていた「花ならば赤く」。有吉佐和子は「悪女について」「複合汚染」「和宮様御留」はじめほぼ読破したと自負していたが、まだまだ読んでないのがあったのか!アマゾンで表題作と「仮縫」を注文しました。

あらすじをざっと見て買った2冊、両方とも働く若い女性を主人公にしているが、人物像がとても対照的。「花ならば赤く」のほうは設立したばかりの化粧品会社の事務で職場のマドンナの“一般職物語”。「仮縫」はファッション業界で野心を燃やす、キャリア女性の栄光と影・・・

(化粧品業界でキャリア系物語をお好みの方は、林真理子の「コスメティック」をどうぞ)

「花ならば赤く」はヒロインの無邪気なOLが何気なくアイデアを出した「七色に光る口紅」の開発と会社の発展が軸になっています。多少その業界にいたので「口紅だけで化粧品会社は成り立たないんじゃ」「要は偏光パールのグロスみたいなものね」と思ったりしますが、この話で純粋につっこみたくなる昭和感は、

・数名が顔を突き合わせる職場で、無邪気な20歳のOLが社長から技術者まで次々ロウラクしてしまうこと。同じ職場で複数と付き合うのは、メールやSNSが発達する現代では不可能だろう(と思う)。

今のOLさんは「職場にいい若手独身がいない」と嘆きますが、昔だってそうそう居たわけではない。時にはおじさんをもストライクゾーン入れたのだとこの小説を読んで思った。

・化粧品イベントだからということもあるが女子社員、遠方出張するのにもハイヒールを履き、先輩社員から借りた補正下着を身に着ける(辛そう!)。

バンキュッバンになった女子社員と一緒にタクシーに乗った営業マンが

「晴子ちゃん、いい体してるんだねえ」と話しかける。

今ならセクハラで問題になりそうです。

これまでに読んだ有吉佐和子は伝統芸能や社会問題をきちんと取材して書いた作品が多かったので、こういう系統を書いていたとは知らなかった。どろどろした人間ドラマだけでなく、最後の10%くらいはこの会社に池井戸潤並みの大転換があるので、それは期待して読んでください。