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第7回 2015年版の審査について

2015年版が大幅な改訂が行われて発行されたため、その審査の行方については気になるところではあります。規格の根幹は2000年版から基本的な変更はないとも言えますが、本来、審査機関が2000年版が発行された時点で、規格の意図を見抜き対応を十分にしておれば、今回の2015年版のような改訂には至らなかったのではないかとも思われます。

その代表例の一つがプロセスアプローチです。プロセスアプローチを正しく理解していなくては、2000年版の審査はできなかったのですが、ほとんどの審査機関が理解していなかったと言っても過言ではありません。或いは、理解していたかも知れませんが、真剣に取り組んでいなかったというのは事実でしょう。

例えば、プロセスアプローチの審査では、プロセスのインプット、アウトプットの確認、プロセスの繋がりなどを確認するだけで済ませていたのが実態でした。また、プロセスの変化や有効性については、ほとんど審査の対象にもなっていなかったと言っても良いでしょう。また、2000年版では、経営者のコミットメントを強く要求していたのですが、この点についても関心をもっておれば良し、または、少し関わっておれば、なお良しと言うスタンスの審査が行われてきたものです。
今回は、これらに加えて、リスクベースの管理や、パフォーマンス重視の管理などが追加されました。これらは、2015年版のコアコンセプト、すなわち、規格の根幹を形成する概念として審査の重要な項目となります。

それでは実際の審査は、どのような体制で実施されるのでしょうか。先ず、現在、進められているのは、審査員の資格の更新です。これは、2015年版用の審査員資格が設定されて、この資格を取った審査員が審査を行うという仕組みが進行しています。審査員は研修やレポートの提出などを行って書類審査で資格を取得することになります。その内容は、かなり突っ込んだ審査を前提にして研修やレポートな内容となっており、審査員にはかなり負担になっているのではないでしょうか。

このような取り組みが実施されているため、2015年版の審査が行えるようになるには、審査員が2015年版対応の資格を取得した後となりますので、各審査機関が審査対応できるようになるには、2016年後半からではないでしょうか。それでも十分な審査員を確保できるかどうかは判りません。もっと、遅くなる可能性もあります。何しろ、研修を実施出来る機関が指定されているため、その研修機関の能力次第、審査員の参加次第という側面があります。

このような取り組みにより、2015年版の審査は、これまでよりはレベルアップされたものになることが期待され、9001規格の運用の改善に繋がることは喜ばしいことではあります。しかし、一方では、懸念材料もあります。それは、審査員の絶対数が減るのではないかということです。何故かと言いますと、これまで審査機関は、審査の大半を下請け、または、個人契約で実施してきた事実があるからです。

この2015年版の審査員の資格取得は、下請けの排除に繋がることが予想されるのです。審査員の資格取得は、審査機関に所属している審査員が対象になっていますので、下請けの審査員は新規の資格取得の対象外となり、審査ができなくなります。また、年配の審査員は、負担の大きい研修やレポートを作成してまで資格取得を図るかどうかは判りません。もしかしたら、元々、大した審査数を上げていたわけではないので、負担の大きい資格取得には、二の足を踏むかもしれないのです。また、下請けの審査員に対しては、審査機関が独自に勝手な資格(例えば、**認定主任審査員)を付与して審査に参加させて、経費を浮かせていたのですが、今後、この方法は出来なくなる可能性があるのです。

それは、2015年版の資格取得審査員には、資格取得した証明としてカードが配布され、そのカードを受審企業に提示することにより、自らの資格を証明するようになっているからです。従って、受審企業は、2015年版の審査を受けるに際して、審査員にカードの提示を要求することが必要となります。審査員がカードを忘れたとか、紛失したとかの説明をした場合は、下請け審査員の可能性があります。この場合、無資格の審査員に審査費用を払うことになるのです。

このように、2015年版の審査はこれまでとは、異なる取り組みが必要になっているのですが、一方の指導する側のコンサルタントはどうでしょうか。大企業は別として、中小企業の場合は2015年版の改訂に対応したQMSの構築を自社のみで実施するのは、担当者の力量に依りますが、大半の企業は無理ではないかと思われます。何らかの外部からの支援がなければ、無理ではないでしょうか。

無理な要因の一つが、2015年版の改訂で、コアコンセプトが大きく変更になったことです。この大きな変更が審査員の資格の設定となっていることを理解する必要があります。ここをしっかりと理解して取り組まないと対応ができていないQMSになります。従って、今回の改訂によりコンサルタントの需要は伸びると思われますが、コンサルタントの指導能力はこの改訂内容に追従していっているのでしょうか。Web上のコンサルタントのホームページを見て判断すると、とてもそのようには思えません。未だ、2008年版の延長でOKと考えているコンサルタント会社がほとんどです。このようなコンサルタントに指導してもらった企業は、審査でしっぺ返しを食らうことになりかねません。注意が必要です。

コンサルタントも審査員の研修機関で研修を受けるというのも一つの方法ですが、それは、あくまでも審査サイドの見方での研修ですから、コンサルタントの力量の半分程度しか満たされないと考えてよいでしょう。コンサルタントがこれまでの実績をいくら誇っても、規格改訂の内容に精通していないと2015年版のQMS構築の指導は不可能です。これまでの視点と全く異なる規格要求事項であることを肝に銘じて指導すべきです。2015年版の改訂は、審査員及びコンサルタントの力量が大きく試される機会であると言っても良いでしょう。

当サポートセンターでは、移行審査に必要な文書作成をサポートするために、文書様式を提供していますので、そちらもご利用下さい。記入要領を添付していますので管理責任者であれば、どなたでも文書作成が容易にできます。後は、記入したことを実施するだけで移行審査に合格することができます。


今回の改訂は、ISO9001の大きな変換点になるのではないかと思われます。それは、規格要求事項への対応が難しい企業や審査員、コンサルタントの脱落が予想され、真にISO9001に価値を見いだして取り組みたい企業、能力があり専門職として継続的に従事したい審査員、ISO9001の価値を理解し運用によって効果を上げる方法を取得した力のあるコンサルタントのみが生き残ることができるという時代の到来ではないかという予感がするからです。さて、そのようになるのでしょうか。