ジョーカー | わたしと本と映画と

わたしと本と映画と

ブログの説明を入力します。

青年アーサーは、大道芸人の仕事をしながら病弱な母親と街の片隅でひっそりと暮らしていた。いつの日かコメディアンになる事を夢見て。
アーサーには脳の障害があり、総合失調症の為に妄想や、可笑しくもないのに突然笑い出してしまう症状がある為に、周囲の人達からは変人の様に扱われ、差別や侮辱行為を受ける事は日常茶飯事だった。けれど人を笑わせてハッピーにする事が好きなアーサーは、大道芸人の仕事に真面目に取り組んでいた。拳銃を手にするまではー

障害がある為に、人格を否定され人権を剥奪される。理不尽な暴力を受け、ついには仕事まで奪われてしまったアーサーの怒りは頂点に達する。そして愛する母親から明かされる自分の本当の生い立ち。アーサーの事をハッピーと呼んでいた母親。ハッピーだと思った事など一度も無いのにー
やがてアーサーの怒りは暴走を始める。誰も自分を認めてくれない、自分は本当に存在しているのだろうか?

貧富の格差、障害者に対する差別。どちらもきっと無くなりはしないだろう。強者と弱者は決して同じにはなれない。強者が弱者に対して救いの手を差し伸べたとしても、それは憐みや慈悲の感情でしかないのだから。だから街の人々は市長よりも、犯罪者のアーサーを支持したのだろう。自分達と同じく貧困や差別に苦しむアーサーに…
自分の行動がきっかけで街には暴動が起こり、アーサーはまるでカリスマの様に人々から讃えられる。やっと自分の存在を認めて貰う事が出来たアーサー。例えそれが悪の道への始まりだったとしても。

全編通して重く、観ていて苦しくなる。善人が悪人へと変貌する瞬間、それはアーサーだけでは無く誰もがその可能性を秘めているのだと感じずにはいられなかった。僕の人生は悲劇では無く喜劇だと嘯くアーサーの笑い声、ダンス、全てに悲しみが満ち溢れていた。
愛する母親を自らが手に掛けた事だけは妄想であって欲しいと願う。