ボーダー 二つの世界 | わたしと本と映画と

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スウェーデンの税関職員のティーナは、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける人並外れた嗅覚を持っていた。嗅覚と言っても、ティーナの場合は単純に匂いを嗅ぎ分けて大麻等の違法薬物を発見するだけでは無く、児童ポルノ等の違法な物も発見出来る、人の悪意も感じとれる不思議な能力だ。

ティーナはそんな秀でた能力の持ち主だけれど、醜い容姿のせいで孤独を強いられていた。家にはボーイフレンドのローランドが同居しているけれど、二人に性的な関係は無く、ティーナは染色体の異常で性行為はおろか、子供を宿す事が出来なかった。ローランドとの関係性は正に唯の同居人で、裸足で散歩する森で出会う動物達の方にティーナは癒しを感じていた。
他者と自分との間に違和感を覚えているティーナだけれど、仕事は真面目にこなし近所付き合いにも配慮が出来ていた。それに苦痛を感じていても…

ある日ティーナは、税関で怪しい不気味な男ヴォーレと出会う。身体検査の結果、彼には男性器が無く膣があり臀部に大きな傷跡があった。ヴォーレに興味を抱くティーナ。それは自分と似た醜い容姿、自分にもある臀部の大きな傷痕だけが理由では無かった。ヴォーレから自分と同じ匂いを感じたからだった。

惹かれ合うティーナとヴォーレ。そして明白となるティーナの出生の秘密。他者との間にあった違和感の理由が分かり、「人と違うという事は君が優れているという事」ヴォーレの言葉に心が自由になれたティーナ。ヴォーレと愛し合うシーンは、泥まみれで野生そのものだった。女性としての機能が無かった理由も分かり、苦しみから解放されるティーナ。ヴォーレとこのまま森で幸せに暮らす事がティーナの願いだったのだろうと感じた。
けれどヴォーレは超えてはいけない境界線を超えてしまっていた。迫害を受けていた仲間達の復讐の為にー

これはリアルなファンタジー。美しいお姫様も可愛い妖精もいない。ヴォーレと逃避する事も出来たはずなのにそうしなかったティーナ。人間との境界線を超えなかったティーナ。境界線は他者から決められるものではなく、自分自身が決めるもの。ここに存在するのは森と湖とティーナの美しい心だけ。唯それだけー