Tさん(42歳)は病歴8年の糖尿病。親戚も糖尿病の人がたくさんいます。
本人も食べ過ぎてなくて、スリムなのに糖尿病を発症しているタイプの人です。
現在、ヒューマログ 朝6-昼4-夕8単位の皮下注を実施中。
「(23:00)よし今日の眠前の血糖値は110☆明日の朝には80くらいかな?」
・・・と心穏やかに眠りにつく、Tさん。そして翌朝。
「(7:15)ゲ、なんで血糖値が130に上がってるの?昨日の夜からなんにも食べてないよ!」
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こんな経験ありませんか?
インスリンは体の中で唯一血糖値を下げることのできるホルモンですが、
実はインスリンは血糖値を下げるというよりもむしろ、
栄養を体に蓄えるためのホルモンというのが適切です。
インスリンは血中のブドウ糖を肝臓や筋肉・脂肪へ蓄えさせます。
血中のブドウ糖減少→血糖値が下がるため、インスリンは血糖値を下げるわけです。
インスリンがもしもでななくなれば、体に栄養を蓄えられないため、
食べても食べても体重は増えずに、どんどんやせ細ってしまいます。
食事をすると大量の糖が体に入ってくるわけですから、
「食後にインスリンがたくさん必要」というのはわりと理解しやすいですよね。
しかし、実はインスリンはなにも食べてなくても、生きていくために微量ながらでています。
インスリンの役割は食後と空腹時では全く異なります。
①インスリンは食後に糖を肝・筋・脂肪細胞に蓄える。
具体的にインスリンは肝臓、筋肉、脂肪細胞に作用します。
食後は食事中の大量の糖が、一気に消化管から流れ込んできます。
食事からの栄養をしっかりと肝臓・筋肉・脂肪に蓄えなければいけないので、食後に大量のインスリンが膵臓から分泌されます。
(クリックで拡大)

②インスリンは空腹時の肝からのブドウ糖放出を調節する
インスリンは食後だけでなく、空腹時においても重要な役割を果たしています。
われわれは1週間水だけでも生存することが可能です。
これは肝臓に蓄えられた糖質が、空腹時に肝臓から放出されるためです。
インスリンは肝臓から放出されるブドウ糖の量を調節しています。
インスリンが少ないと肝臓はブドウ糖を過剰に放出しすぎて、血糖値は上昇してしまいます。
そのため、「昨日の夜から食べてないのに、なんで朝の血糖値が高いんだろう?」という現象が起こります。
これはインスリン不足のために肝臓が貯蔵している糖を放出しすぎるためにおこる現象です。
空腹時のインスリンの役割(クリックで拡大)
このようにインスリンは食後と空腹時でまったく異なる役割をします。
インスリン治療においては、
この複雑なインスリン分泌を再現することで、
血糖値を安全かつ効果的に下げることができます。