甘さ漂う | 秘密の35年☆赤い糸の行方

秘密の35年☆赤い糸の行方

何度別れても、切れることのなかったふたりの糸。二股だったときも、彼が「あの人」と結婚してしまったときも、わたしが海外で暮らし始めたときも。音信不通6年、14年ぶりの再会から、再び動き始めた恋。国境を越えた超遠距離・婚外恋愛。

<「戻るべきところ」の続きです。>

州立公園からほど近い
小さな森林の中に建てられた
コテージ。

二階の大きなバルコニーからは
真っ正面に湖が見える。

下を見下ろせば、
子供たちが魚釣りをしたり、
カヌーをしている様子を
眺めることが出来た。

このバルコニーはわたしの
お気に入りの場所となった。

わたしはよくここでのんびりと
珈琲を片手に読書をしたり、
友だちへ送るメールの
下書きをしたりした。



インターネットは
街へ出ないと繋がらなかった。

街へ行く用事が出来たときに
図書館に立ち寄り、
まとめてメールやブログを
チェックするようにした。



彼には空港からメールを
出したきりになっていたけど、
特に気にならなかった。

もともと待ち時間を利用して書いた
読み捨てメールのつもりだった。

それに。

これまでのパターンからいけば、
わたしが日本を離れた途端、
彼からはぷっつりと
連絡が来なくなるはずだった。



数日ぶりに繋げたインターネット。

新着メールが数通溜まっていた。

このときもその中に
彼のメールが混ざっている
かもしれない、などということは
全く考えなかった。

だから予想外にも受信箱に
彼の名前を見つけたときは、
嬉しかったと同時に
ちょっと驚きもした。

さらに。

その内容にわたしの心は
ますますあたたかくなった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
差出人: 河原

ゴメン。

返事が遅くなって。

XXXXが帰ってからは、
こっちのアカウントは
まめにチェックしていなかったんだ。

もうとっくに無事に
ウインターランドに
着いているよね。

日本は相変わらず暑いよ。

残りのバカンスを楽しんでね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


チェックしてなかったって…。

それって、つまりわたし専用の
アカウントっていうこと…?



今回日本へ行ったとき、
彼から教えてもらった
新しいアドレス。

iPhone用のアカウントだった。

そのアドレスが
特別なものだったことを
このとき初めて知った。

あとで彼から聞かされたのだが、
このアドレスにメールを送るのは、
わたしぐらいしかいないらしい。

つまり他の人には
知らせていないということだ。



嬉しかったことはもうひとつ。

メールの中で彼がわたしのことを
ニックネームで呼んでくれたこと。

最後に彼にその名前で呼ばれたのは、
ふたりの関係に翳りがともる前。

震災の前後だったと記憶している。

ふたりだけでいるとき、
あるいはメールの中でしか
使われない名前。

彼に愛称で呼ばれると
くすぐったくなる。

彼がその名前で
わたしを呼ぶときは
どこか甘さが漂っているから。

(続く)

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