それまでまったく英語に関心がなかった部下たちが興味を持ち始めたという話。
「ミリって何倍すればいいんだっけ、百倍?千倍?」
そんな部下の会話にウンチクを垂れてみたくなった。これ見よがしに。
〝ミリ〟はラテン語で〝千〟を意味する ‘mille’ に由来する。だからミリは1000分の1。
なのでメートルやグラムに換算するときは1000倍。
〝ミルフィーユ〟というケーキは綴りが ‘mille feuilles’ で、これはフランス語で〝千枚の葉っぱ〟という意味。生地を何層にも重ねるところからそう名付けられたはず。
実際の発音は〝ミユフォイユ〟みたいな感じ。
千葉=ミルフィーユ
あまりウケなかった。
同じくフランス語で ‘mille mercis’ と言えば、ありがとう×1000で〝本当にめっちゃありがとう〟という意味。
因みに、フラ語もイタ語もスペ語もポルトガル語も、みなラテン語から派生しているので、その差異は方言程度な感じ。もちろん、例外も多いが。個人的には津軽弁と鹿児島弁の方がよっぽど開きがあると思う。
西暦2000年、巷でやたら〝ミレニアム〟と騒いだのを憶えているだろうか。 ‘millenium’ は〝千年紀〟という意味で、やはり ‘mille’ から来ている。
部下たちは、
「へー、ほー」
と感心している様子なので追討ちを。
〝センチ〟も同様。
‘cent’ はラテン語の〝百〟で、1センチメートルは100分の1メートル。
パーセントの綴りは ‘percent’ で ‘per’ は〝〜ごとに〟を意味する。つまり、〝100で割るごとに〟という意味。
時速100キロを英語で ‘100 kilometers per hour’ と言うが、それは1時間ごとに100キロ進むスピードということ。
外車(アメ車)のスピードメーターに ‘mph’ とあるのは ‘mile per hour’ の略で〝時速○○マイル〟という意味。〝ムプ〟とか〝ムフ〟ではない。
‘century’ は〝世紀(百年紀)〟のことで、1セントは100分の1ドル。即ち、
1 dollar = 100 cents
ドルに限らず、ユーロでもポンドでもセントと言えば100分の1。
いつもどこかズレている部下が、
「センチメンタルは?」
それは ‘sentimental’ で ‘cent’ とは関係ない。
「デシリットルは?」
と別の部下。
〝デシ〟も同様でして(あら?)やはりラテン語の ‘decimus’ から。厳密に言うと、ギリシャ語の〝十〟という意味の ‘δέκα(deca)’ が大元。
英語で10年を ‘decade’ という。
実は December も ‘deca’ からで、12月は旧暦では10月なのである。
勘のよい部下が、
「そう言えば、October と Octopus は関係ないんすかね。タコじゃなくてイカっすよね、足の数で言ったら」
鋭い。‘October’ と ‘Octopus’ は同じ語源で、10月は旧暦で8月だったから〝オクト〟なのだよ。
‘octo’ は〝8〟という意味で、やはりラテン語。
「ゥオーッ!」
部下たちは豆鉄砲を食らったハトのように歓喜している。
「要するに英語ってラテン語から来ているんすか」
例えば〝図書館〟は英語で ‘library’ だけど、スペ語やイタ語で〝本〟を ‘libro’ と言い、同じ語源でやはりラテン語から来ている。
言語学者でもなんでもないのでハッキリとしたことは言えないが、多分、英語は文法的にはドイツ語とかオランダ語のゲルマン系に近い?でも語彙的にはラテン系が多い?
つまり、シャシがゲルマンで、ボディがラテンって感じ。
「あー今ので分からなくなったッス。途中まで良かったのになー」
そんな彼らだが、参考書を買ってきて英語の勉強を始めたようであった。
自分も彼らを見習って滞っているフラ語を。