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宝石ブルー今度はシリアス 

原稿紙白紙スタートにつきハザクは出てきません

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バーラハーラは砂漠を縄張りとするモンスターで、その生態や特性は謎に包まれている。しかし、その姿から「沙海竜」という別名を持ち、流砂を形成して罠として利用することからもわかるように、非常に狡猾な生物であることは間違いないだろう。さらに、柔軟な身体を使っての攻撃と粘液を使った攻撃も恐ろしいものであることは言うまでもない。そして今、その砂漠を縄張りとするモンスターが三頭、小型モンスターの群れを掃討するために張り巡らされた調査団包囲網の一角に出現していた。


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『隔ての砂原』は、その名前が示すとおり、砂嵐の絶えない荒野である。だが、このところ砂塵を含んだ強風が吹くこともなく、風紋も描き出さない日々が続いていた。
しかし今日になって、大陸西部に広がる広大な砂漠から現れたモンスターの群れに対処すべく派遣された調査団の前方に、突如として砂漠から流れ出した水が川となって出現したのだ。
しかもそれは一本ではない。まるで蛇のようにくねり、大地を二つに分かつかの如く南北に長く伸びているのである。調査団は急遽その水流に沿って展開し、モンスターの襲撃に警戒を強めた。
水流の左右に広がる砂丘の陰などにモンスターが潜んでいないか目を凝らしていた調査団の前に現れたのは、巨大なワーム型の生物であった。そのモンスターは、まるで調査団の出方を窺うかのように、水流の手前で鎌首をもたげて動かない。
「あれは……『沙海竜』か?」
「沙海竜のように見えるな……」
そのモンスターは、一見すると巨大なワームのようであったが、よくよく観察してみるとワームとは異なる特徴が数多く見受けられた。まず目を引くのは、頭の半分近くを締める巨大な顎だろう。さらに、まるで鎧のような形状の皮に覆われている。これは、砂や石、またはモンスターの骨などを噛み砕き、身体に取り入れて消化するための特殊な皮である。ワームのような外見にもかかわらず、このモンスターは「竜」の名を冠するに相応しい高い知能を備えているのだ。そして、その長い身体と強力な顎で獲物に襲いかかるのである。
「まずいな。ここは沙海竜の縄張りだ」
「こいつがここにいるということは、他のモンスターはもっと北にいるはずだ」
調査団は、この巨大ワーム型の生物を『沙海竜』と名付けて警戒を強めた。
しかし、その『沙海竜』が動かない。まるで何かを待っているかのように……。そして調査団の後方で水流が途切れると同時に、それは起きた。突如、砂丘の陰から巨大なワーム型の生物が現れたのだ。しかも、その数は一つではない。次々と砂丘の陰からモンスターが姿を現す。
「まずい! 仲間を呼ばれた!」
「退避っ!音爆弾と閃光弾!急げ!」
調査団のハンターはモンスターの襲撃を阻止すべく、すぐさま音爆弾と閃光弾を投擲する。強烈な光と音が、その一帯のモンスターの動きを鈍らせる。だが……
「駄目だ! 次から次へと出てくる!」
「くそっ! 何匹いやがるんだ!?」
『隔ての砂原』の調査団は、その圧倒的な物量に飲み込まれようとしていた……。


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『隔ての砂原』の橋頭保確保を企図したこの作戦は順調だった。
デルクスを翻弄し、戦線を分断することに成功したのだ。あとは包囲網を縮めて仕留めるだけ、小さな雑魚ばかりだとふんだリーダーが不意に現れた存在に混乱させられるまでは。
「なんだ、あれは……」
調査団がうろたえるのも無理はないだろう。突如地面の中から出現した巨大な影は、その大きさだけでデルクスをも凌駕していたのだから。
「ギアアーッッ!」
バーラハーラの一頭が天に向かって大きく咆哮すると、それを合図に巨大な流砂が発生した。それは調査団の退路を完全に断ちつつ、二匹のバーラハーラが巧みに連携して次々と流砂を形成していく。
「くっ……総員退避っ!」
リーダーの号令で一斉に散開するハンターたちだったが、時は既に遅かった。
「うぁあっ!」
「な、なんだこれっ!?」
流砂に足を取られたハンターたちが次々に転倒していく。そのハンターたちを嘲笑うようにバーラハーラの群れは流砂の上を跳ねて躍りかかり、強力な粘液を飛ばして装備や肌を焼いていく。あっという間に数人の犠牲者を出してしまい、もはや壊滅状態である。
「く……総員、撤退だ! この包囲網を突破する! 殿(しんがり)は俺が務める!」
リーダーがそう叫ぶと、殿(しんがり)を務めるべく流砂に向かって単身で突撃していった。しかし、そのハンターの行く手を阻むように、巨大な影が立ち塞がる。
「ギアアァ……」
「なっ!? ティガレックス!?」
流砂の上に悠然と佇むのは、この『隔ての砂漠』に君臨する絶対強者・ティガレックスであった。その巨体と威圧感は、まるで調査団を威圧するかのようだ。リーダーは恐怖に震える手で音爆弾を取り出すと、ティガレックスに向かって投げつけたが、ティガレックスは鬱陶しそうに尻尾を振るってそれを弾き飛ばした。
「ギアッ!」
そして、その巨大な顎で調査団のハンターを一人咥えると、まるでボールでも扱うかのように軽々と投げ飛ばす。
「ぐわぁっ!?」
宙を舞うリーダーの目に写ったのは、流砂の上を跳ねながらこちらに近づいてくるバーラハーラの群れだった。そして、その先頭にいる一際大きな個体が天に向かって大きく咆哮したかと思うと……
「ギアアァァ……」
そのハンターの全身を粘液が包み込んだ。


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『砂上の血塗れ聖堂』とでも形容すべきだろうか。調査団は壊滅的な被害を被っていた。
しかし、それでも彼らはまだ全滅してはいなかった。バーラハーラの巨体に隠れるようにして、全力疾走で包囲網を突破しようとしていた。
「ぐあっ!」
「ギャウッ!」
しかし、それを許すほどモンスターたちも甘くはなかった。数頭のバーラハーラが逃走を阻止するべく強烈な粘液を吐き出す。そしてついに一人、また一人と犠牲者が出る中……
「ちっ!もうきやがったか!」
リーダーは舌打ちしながらそう叫んだ。その視線の先には、砂煙を上げながら猛然と迫ってくる巨大な影があったのだ。
それは、まさしくその二つ名に相応しい威容であった。身を覆う黒い甲殻は日光を反射して鈍い輝きを放ち、巨大な顎と太い尻尾を振り回して迫り来るその姿は、まさに地底の悪魔である。リーダーは即座に決断を下すと、殿(しんがり)を務めるべく他のハンターに撤退を促した。
「俺が時間を稼ぐ! お前らは早く逃げろっ!」
「だが……」
「いいから行け! 死ぬんじゃねぇぞ!!」
リーダーは殿を務めるべく、愛用の剣ボーンククリを構えて巨大なバーラハーラと対峙した。ハンターはモンスターの急所を的確に攻撃して討伐する技術が要求されるため、その役目には相応の実力が求められる。そしてリーダーもまた、数多のモンスターと死闘を繰り広げてきた熟練ハンターの一人であり、かつてモノブロスとソロで戦った事があるほどの実力者であった。
しかし、今回の相手は少し勝手が違うようだ。今まで相手にしてきたモンスターとは比べ物にならないほど巨大な体躯と威圧感は、まるでリーダーを圧殺しようとしているかのようである。その巨体から繰り出される強烈な突進や尻尾による薙ぎ払いを紙一重でかわし続けながら、隙を見て剣を振るうが……
「くそっ!硬ぇな……」
自慢のボーンククリが全く通らないことに驚愕するリーダーは、その巨大なバーラハーラの尻尾に薙ぎ払われて大きく吹き飛ばされてしまった。「ぐはっ!?」
肺の中の空気が一気に吐き出され、一瞬意識を飛ばしかけるリーダーだったが、それでも何とか体勢を立て直して立ち上がろうとする。
しかし、それを見過ごすほどバーラハーラは甘くはなかった。
リーダーが顔を上げると、そこには巨大な顎があった。そして次の瞬間、鋭い牙の並ぶその口に咥え込まれてしまったのだ。
「ぐわああああっ!?」
リーダーは必死で手足をばたつかせて抵抗するものの、バーラハーラの顎の力の前には全く歯が立たなかった。やがて全身の骨がミシミシと悲鳴を上げ始め……
「あ……あぁ……」
そのまま意識を失ったのだった。


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「ギアアァァ……」
バーラハーラは、そのハンターをまるで玩具のように弄びながら、ゆっくりと包囲網を縮めていく。そして、ついには『隔ての砂原』から完全に追い出してしまった。
こうして調査団の壊滅という最悪の事態は免れたものの、その被害は甚大なものとなってしまったのである。
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著:AIのべりすと