韓国ドラマ『トッケビ』のキャストが、 江陵に再び集まったというニュースを見ました。

コン・ユさん、イ・ドンウクさん、 キム・ゴウンさん、ユ・インナさん。10年の時間を越えて、 あの4人がもう一度同じ場所に立ったというだけで、 なぜか胸の奥が少し動くような気がしました。思い浮かんだのは、 ストーリーよりも先に、あの海辺の風景でした。 冬の空気、波の色、 誰かを静かに待っているような時間。『トッケビ』は、 物語と一緒に"風景ごと記憶に残る"ドラマなのだと、 あらためて感じます。

なぜ今もこの作品はこんなに愛されるのか。 

なぜ江陵という場所が、こんなに特別に思えるのか。今日はそのあたりを、 私なりにゆっくり書いてみたいと思います。


[10年経っても色あせない『トッケビ』]


『トッケビ』は2016年12月から2017年1月にかけて 放送された全16話のドラマで、 最高視聴率はケーブル局としては異例の **20.5%**を記録した作品でした。放送から10年近く経ったいまも、 日本のランキングで「絶対に見るべき韓国ドラマ」 第1位に選ばれていたりと、 人気が落ち着くどころか、 むしろ静かに育っている印象があります。


そんな中、2026年の春に、 コン・ユさん、イ・ドンウクさん、 キム・ゴウンさん、ユ・インナんの4人が、 10周年を記念したバラエティ番組の撮影のために、 再び江陵に集まったというニュースが届きました。"あの作品の続き"が見られるわけではないのに、 ただ「同じ4人がまた江陵にいる」というだけで、 こんなに気持ちが揺れるドラマも、 なかなかありません。それくらい、 『トッケビ』は人の中に深く残るドラマなのだと思います。


**物語よりも先に、風景を覚えているドラマ**


『トッケビ』を思い出してみると、 不思議なことに、いちばん先に浮かんでくるのは、 セリフでもあらすじでもなく、 景色だったりします。

冬の海辺に立つ、長い黒のコートのトッケビ。 

赤いマフラーを握りしめて歩いていく女の子。

 雪の中で、誰かを待つように見えた静かな時間。

ドラマって本来、 物語の中身がいちばん大事なはずなのに、 『トッケビ』は空気のほうを先に思い出してしまう作品です。


それは多分、 このドラマが、 ただ恋愛や運命を描いたのではなくて、 「待つ」「離れる」「忘れない」という、 人の感情のいちばん柔らかい部分を、 風景と一緒に置いてくれたからなのかなと思います。


**なぜ「江陵」がこんなに特別に感じるのか**


そんなドラマの中でも、 ファンの記憶に強く刻まれているのが、 江陵にある注文津(チュムンジン)の防波堤です。ヒロインが赤いブーケを抱えて立ち、 トッケビを呼び出すあのシーン。韓国観光公社のサイトでも、 ここは『トッケビ』のロケ地として正式に紹介されていて、 今もたくさんの人が写真を撮りに訪れる場所になっています。



ここで少し不思議なのが、 ドラマのロケ地ってたくさんあるはずなのに、 江陵の海だけがやけに記憶に残るということです。理由は人それぞれだと思いますが、 私の中では、こう感じています。


{江陵の海は、 「こちらとあちらの境目」みたいな場所として映っていた。}


向こうから誰かが現れるかもしれない海。 

ここから誰かが去っていくかもしれない海。 

今と昔が、ふっと重なってしまうような海。

『トッケビ』というドラマがもともと、 生きている人と、そうでない人の境目を描いた物語だったから、 あの海辺の風景は、 ただのロケ地以上の意味を持ったのだと思います。だから10年経っても、 キャストがあの場所に戻った瞬間、 私たちはまた、あのドラマの空気の中に、 すっと連れていかれてしまうのかもしれません。



"終わったのに、終わっていない"作品


10周年でキャストが再集結したというニュースは、 事務的に言えばただの記念企画です。

でも、終わったはずの作品が、 いまも人の心の中で続いている。その事実を、 このニュースは静かに教えてくれました。『トッケビ』は、 最終回を迎えたところで完全には終わらず、 見た人の中で、ずっと続いていくドラマなのだと思います。

冬になるとふと思い出す。 海を見るとなんとなくよみがえる。 誰かを待っている気持ちのときに、ふっと重なる。


そういう作品って、 本当に数えるほどしかありません。


**余韻を、もう少しだけ手元に置きたくなる**


こうやって書いていると、 このドラマの余韻を、 もう少しだけ手元に置きたくなります。

たとえば、 冬の海の色をしたノート。

 手紙を書きたくなるような、少し厚みのある紙。 

赤い差し色のしおり。 余白の多い、静かな韓国の絵本。『トッケビ』を思い出したくなる夜って、 たぶん派手なグッズより、 静かな小物のほうが合うのかもしれません。


**おわりに**


江陵に再び集まったキャストのニュースは、 私にとって、 "もう一度ちゃんと『トッケビ』の話を書いてみよう" と思わせてくれる出来事でした。

ストーリーよりも先に風景が浮かぶドラマ。

 ロケ地以上の意味を持ってしまう海辺。 終わってからのほうが、長く続いていく余韻。『トッケビ』が今も特別なのは、 たぶんこういう理由なのだと思います。


このブログでは、これから 韓国ドラマや韓国文化の話を、 民俗学や暮らしの視点も少し交えながら、 ゆっくり書いていく予定です。