初めてそれを受けなければいけなくなったのは、耳下腺腫瘍の摘出手術が決まった時だ。

テレビやなんかでどんな形かってぐらいは知っていたが、どうなっちゃうかって事は知らなかった。

ただ動く輪っかの中で15分ぐらいじっと動かずに我慢しなきゃいけないんだなって思っていた。

だからそんなに不安も感じてなかったし気にも留めてなかった。

なので前日は誘われるまま朝まで飲んでしまい、二日酔いのままMRIを受ける事となった。

勿論、体内のアセトアルデヒドは元気に活動しまくっている。

そんなこちらの事情なんてお構いなしに、あれよあれよと検査は開始される。

機械の上に横に寝かされると、すかさず身体をベルトで固定。

撮影部分も頭部ということで、頭の位置を決めつけられると、動けない様にこれまたベルトで固定。

大丈夫ですかぁ? などの問いかけに相槌を打っていると、突然目の前を鉄格子(イメージ)で閉じられる。

えっえっえっ? なに? いったい何が起こってるんだ??

それでは始めます。辛かったり苦しかったりしたら、手持ちのボタンを押してください。


びーっびーっびーっびー!

びーっびーっびーっびー!

びーっびーっびーっびー!

びっびっびっびっびっびっびっびっ!

びっびっびっびっびっびっびっびっ!

びっびっびっびっびっびっびっびっ!


うげぇ?! なんだこれは? 何されてんだ?!

突然鳴り響くノイズに、弱った脳と身体が反応する。

あぁ! やめろやめてくれ!

不快な騒音の応酬に身をよじろうとするが動かない。

足だけがかろうじて動く。

身体も微妙に震えだし、脂汗(冷汗? )が皮膚を支配していく。

不快な感覚が身体のあちこちかから発信される。

次第に息も荒くなり、眼球が落ち着きをなくしていく。

でも、決して瞼は開けられない、開けてしまったら・・・。

眼の前には、いわれのない鉄格子(イメージ)。


頭の中はあり得ない妄想でいっぱいになる。

拘束され鋼鉄のマスクまでされて、超音波で洗脳させられてるってところか。


結局、途中で検査を中止してしまい、これをきっかけに暗くて狭くてうるさいところが駄目になる。

途中、プレドニンでその効果に拍車をかけプチパニック症候群の様にまでなったけど、さしあたる困難もなく生きてこれた(社会的、経済的にはクソ野郎にまで陥ってしまったが)。

が、今一度その困難を克服しなければいけない時がやってきてしまう。

右半身麻痺の原因を探るには、どうしてもMRIがかかせない。


CTとかで乗り切ろうとする僕に先生が取り出したのは、アタラックスPと言う安定剤だった。

・・・アタPだ!


押し切られるまま静注され、車椅子に乗せられて久々のMRIへ。

通常の倍の量を投与されたので気分は結構ヘロヘロで、検査中も投与し続けたのですぐに眠ってしまっていた。

しかも、伝達ミスで終わってからも投与し続けたので、処置室で爆睡してしまったようだ。

そんな状態だったわけなので、当然検査はクリアー。

以後、MRIを受ける時は、アタPを検査の30分前に必ず打ってもらっている。

最近、慣れてなくても良いかななんて思ってもいるが、一度試した睡眠薬がやめられないのと同じで、いざとなると頼ってしまってるね。


今は、もうMRIを受ける状況にならないことだけを祈っている・・・、最後の最後に、PETで締めくくるらしいけどね。