悠哉は病室のベッドの上で目を覚ました
「ここは・・・どこ、だ?」
体を起こそうとしたが、胸が痛み起こせなかった
しかし、その痛みがあの試合を思い出させる
「勝ったんだよな?決勝進出だよな?」
そう思うだけで嬉しくなって自然と笑みがこぼれる
するとその時、病室の扉が開きユニフォーム姿のチームメイトが入室してきた
「お、おはようございます・・・あれ?決勝って?」
整列してる先輩の目に涙が溜まってるのを見て、悠哉は何かが起きたと確信した
「悠哉、今日の試合お前の分まで精一杯やってくる。だから、一緒に甲子園に行こう。」
意味が理解できなかった
お前の分まで?どういうことだ?
「先輩、ど、どういう事ですか?‘おまえの分まで’って・・・俺だって今日も・・・」
「お前は試合に出れない」
自分の言葉を遮り先輩が口を開いた
出られない?自分の生活を振り返るが別に悪い事はしてない、一体なぜ?と思った時
「お前は・・・昨日の打球で、し、心臓に負担が・・・かかっちまって・・・」
先輩の目から涙がこぼれる
他の先輩、同級生も泣き始めた
さっきの言葉とこの涙で悠哉はなんとなく自分の状態を理解した
そして、落胆した
・・・俺は心臓がいかれちまったんだ、だから、今日の試合は・・・
そう思うと悠哉の目にも涙が浮かんできた
ここまで、ここまで来て悠哉は決勝に出られないのだ
半年間、入学したての自分を優しく歓迎してくれた先輩
共に汗を流して目指した夢の聖地「甲子園」
その夢にあと一歩で手が届くという所で悠哉はチームを離れるのだ
医師の制止を振り切り車いすで球場のスタンドへ向かった
しかし、悠哉を失ったチームは全く機能せず、歯が立たなかった
17-0、決勝戦とは思えないスコアで悠哉とチームの夏は幕を閉じた
敗れ、涙する先輩に悠哉は申し訳ない気持ちしかなかった
・・・俺の、俺のせいだ。俺がくたばってるからこんな事に・・・
悠哉は涙が止まらなかった
しかし、そんな悠哉を先輩は慰めてくれた
「泣くな悠哉、お前のお陰でここまで来れたんだ。ありがとうな。
もう明日からはお前たちの時代だ。とっとと治して、俺たちの雪辱を晴らしてくれ」
その言葉を聞き悠哉は開き直った
・・・泣いてばかりいられない、先輩たちの分まで頑張ろう・・・
こうして悠哉は来年の夏への誓いを立てた
しかし、病院に戻った悠哉にあまりにも非情な通告が言い渡された
「残念ですが、心臓への負担が強すぎて急激に弱まっています。
・・・もうとても野球が出来る状態にありません」
悠哉は目の前が真っ白になった
ショックの悠哉に対し医師はさらに続けた
「それで、この心臓では余命一年、よくても2~3年でしょう」
嘘だろ?
そう思いたかった
「そんな・・・何とか助かる方法はないんですか?」
「移植手術が成功すれば問題ありません。しかし、その移植手術の成功率は・・・」
「先生・・・」
「・・・10%です」