(掲載写真はすべて筆者に帰属します)

 

海外の秘境の画像を調べていたときのこと、ベトナムには全長数十キロにもわたる世界最大の洞窟群があることを偶然知りました。

私はベトナムへ2005年に、ジャングルの奥地をフランスの野生動物の調査隊と共に、絶滅危惧種のサイ(ジャワサイ)の捜索のため、十数日間入ったことがありました。調査ではサイが生存している証拠は発見されず、残念ながらこのサイは後日、 WWF(世界自然保護基金World Wildlife Fund)により絶滅と認定されました。 その時の調査ではこのような洞窟群が存在することは全く聞いていませんでしたので、その後に洞窟の存在は公表されたのでしょう。

洞窟はベトナム中部からラオス国境に近いジャングルに位置します。ベトナム中部の都市「フエ」の北西にある「フォン・ニャーケ・バン国立公園」Phong Nha-K Bàngという地域にあり、現地人には秘密裏に知られていたようですが、最近になり、英国の調査隊が入って概要が発表されました。公開されていない洞窟も含めると300穴以上あるといわれています。

公開されている中で一番有名なのは「フォン・ニャ洞窟」
Phong Nha Dong25000万年前から形成され、現在は世界遺産に登録されています。

その後、英国の調査は進みフォン・ニャ洞窟の近くで新たに「天国の洞窟」Dong Thien Duongと名付けられた世界で最も美しいという洞窟も発表されました。
さらに、2009年に英国とベトナムは共同で「ソン・ドン洞窟」
Sơn Đoòng が調査され、現時点での世界最大の洞窟だと確認されました。ソン・ドン の“ソンSơn とはベトナム語で川という意味で、巨大な洞窟の中には川が流れています。その深度は深すぎて不明なところさえあるそうです。 この洞窟は2014年に初めて英国の調査隊以外にも入洞が許可されましたが、個人で入ることは許されていません。

National Geographic 誌の写真では、この洞窟は40階建てのビルが1キロ近く横に並んでもそっくり収まるほどの広さを持つ世界最大の地下空間と紹介されています。

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120906/322142/
う~ん、すごい!これは行くしかないでしょう!(私)

私の冒険心に火が付きました。

調べてみると、この洞窟に行くには道はなく、なんと最低で5日間ジャングルや険しい山を登り下り、テントを張り野宿をして帰ってこなくてはならないとのこと。また、雨季には入れず1年間に入洞の許可される人数は制限されてます。 さらにトライアスロンやアスリート並みの体力が必要だとか・・・。

ちなみに、エントリー規定では1日の登山の高低差は4~500m、1日9時間ジャングルを50km歩けること、川で800mの水泳力があること、ひと月に一回以上、ロッククライミングをしていることなどと、これは自衛隊の特殊部隊の訓練並みではないですか!ヒエ~

○×△?~#$・・・意を決して申し込んでみました。無謀もここまでくると気が狂ったか(私)。 ところが2015年度はすでにクローズでした。 2016年度もわずかの空きしかないとのこと、また2017年度は実施未定だとか。 行きましょう。 命がけで地球の地の果てまで行くと決めていますから。 

運よく参加を許可されて申し込みが完了し、私は出発の日まで毎日ハードなトレーニングをすることとなりました。 旅行ではないので、ベトナムの道中や準備などの話は省略し、さっそく洞窟探検の様子をご紹介いたしましょうか。
 

この写真は目的地とは別な前座に用意した観光洞窟です。 ベトナムのハロン湾にありここだけでも感動します。

誰でも時間さえあれば行けますし、このようにライトアップされ幻想的な雰囲気を出してます。なるほど素敵ですね。

天地がどうなっているのかわかりませんね。上が天井です。

スケールがとてつもない大きさです。ここも目的地ではなく、さらに数日移動し私はジャングルの洞窟に向かいます。

 

ベトナムには観光洞窟がいくつもあり、これから紹介する洞窟は観光の洞窟ではありません。もし万一行く場合でも命や安全の保障はなく、むしろ大変危険だとお考え下さい。お勧めいたしません。

どのように行くのかは、ご自分で調べ安全や旅の楽しみのため英語とベトナム語会話は必須ですので学習ください。

 

出発時の撮影をする暇がなくいきなりですが、此処からの写真からが目的の洞窟です。ここまで来るのに沼地やジャングルを抜けての難経路で余裕なし。ようやくたどり着いた目の前の洞窟のあまりの大きさに圧倒されます。

不安な気持ちで荷物を置き、他のメンバーと行程チェック中。

意外とリラックスムードはここまでですが。

と言ってもただひたすら進むだけですけどね。

 

これから中へ出発です。まだ余裕の顔ですが・・・。荷物にヘルメット、ヘッドランプ、軍足などの装備で、ここからは試練のブートキャンプ化しました。

 

洞窟内は真っ暗なので食事ができず、まだ陽の入る明るいここで軽食を取りいよいよ出発します。 ここからがいよいよ大変です。1日の走破時間はフルマラソン以上です。

 

入ってみると全く手つかずの洞窟内には、見たことのない石筍ばかりです。それもすごく大きい。 この不思議な形の岩で一軒家の建物以上あるでしょう。 それにしても不思議な形状で目をみはるばかりです。

 

参加者は南アフリカやオーストラリアなどの外人混成部隊です。

一人の英国人研究家を除くと皆さん30歳以下くらいと若く、私が最高齢者のようで皆さんの足を引っ張らないよう体調管理に真剣です。

 

いくつの洞窟を越えたのか、毎日、幾つも無名の洞窟を通り抜けどんどんと難所を通ります。ところどころで洞穴は抜けていますのでそこで休憩。岩が尖っていて服を着ていても身体は傷だらけです。

 

外の空気を吸い一息入れている所。まだ余力のあるころの写真。洞窟の中は寒くも暖かくもなし。ただし、場所によりとても埃っぽい。2億年前からの埃でしょうか。 防護のためおなかにカメラを隠しています。

 

同行した英国の研究者たち。大変心強い仲間です。

 

洞窟の中にある珍しい“洞窟の真珠”と言われるもの。鍾乳石が岩のくぼみで長い年月転がってできるそうです。

 

鍾乳石の表面は、つるつるのものやこのようにハチの巣状のものなど様々です。 どのようにして形成されたのか、途方もない時間をかけてできたのでしょう。

 

天井から一滴一滴と水滴が貯まって落ち、鍾乳石はできていきます。この不純物のほとんどない水滴から途方もない時を経て石筍ができ、この洞窟はできたのだと思うと、人間の歴史など短く、無に等しいとさえ感じます。

 

洞窟の中はこのように真っ暗なので、ヘッドランプを頼りに進みます。時には進むルートがなかったり、垂直の壁だったりウォーターフォールのときもあり、油断できず大変危険です。

 

此処では簡易ボートを運んで進みました。ここだけはボートをサポート隊が前もって運んであります。この下流には滝がありますので、泳いで流されると命はないでしょう。

 

急な壁ではロッククライミングでロープを頼りに洞窟内の壁を下ります。真っ暗なので高所恐怖症の私ですが、それほど怖くありませんでした。 本当はその方が怖い?

 

上から覗くと下は水面。私、死ぬほどビビってます。

100m近い断崖絶壁をロープ一つで降ったことのある私でも洞窟降下は初めての経験です。

 

此処では地面がなく降りると水面なので先ほどのボートに乗り移ります。ボートがあるのはここだけで、他の場所では激流を泳ぎ上ったり、壁伝いに荷物を背負って泳ぐなど過酷です。残念ながらそこでは写真を撮る余裕などなく、遅れをとらないようひたすら先に進みました。

 

 

壁を越えて外の空気が吸えるところに来てほっと一息。

 

 

一息つけると、また次の洞窟に向かいます。洞窟の中は暗闇でデジカメの暗視野設定しても撮影は難しいです。過酷な環境のせいか、買ったばかりのカメラが故障してしまいました。

 

洞窟内から出てくるところ。疲労でむくんでる?

ゲッソリしているはずなんだけど。

 

洞窟の外に出ると密林が続いています。静寂の中で鳥の鳴き声だけが聞こえます。 ここが長い間発見されなかった理由はこの深いジャングルが隠してくれたからでしょう。

 

毎日の食事は、洞窟を一緒に進むベトナム人の若いポーター達が設営し作ってくれます。ワイルドな料理です。彼らはなんでも道具をその場で作り、改めてアウトドアの意味を勉強させられました。

 

夜は寒く、たき火を囲んで冒険家たち同士は互いの武勇談に花を咲かせています。皆さん口々に早く帰って酒が飲みたいと言ってます。

 

寝床はその辺から木を切って柱を立て、ハンモックで寝ます。

あまり快適とは言えませんね。温泉に入りたいな。

 

飲み水は川の水をろ過機で濾して使いますが、さらに

私は一度沸騰させたものを飲んでいました。洞窟内ではご不浄をできませんのでね。

 

 

地球という存在。至福の時を感じています。 アハハ

 

 

 

おしまい