4月の最終日。ついこの間新年度が始まったと思っていたのに、もう一ヶ月が過ぎたのかと思うと、やはり時間の流れは早い。朝、カレンダーを一枚めくるときの、あのわずかな指先の感触に、小さな節目を感じる。
今日は朝から少し肌寒く、薄手のシャツでは心許なくて、久しぶりにカーディガンを羽織って出かけた。空は曇り。駅までの道を歩くなかで、いつもの木々の緑がぐっと深くなっているのに気づいた。先週までは若葉の色だったのに、もう夏の前の濃さだ。季節は言葉にしなくても、確実に動いている。
午前中は、集合住宅のプレゼン資料の準備。来週の初回提案に向けて、図面とパースの方向性を固めておきたかった。住戸の配置、共用部の流れ、そして何よりも外部との関係性をどうつくるかが、今回のキーポイント。建物の中だけではなく、建物と街との「あいだ」をどう設計するか。それがそのまま、その場所の価値に変わる。
数案あった中から、今日は一案に絞って深掘りすることにした。図面を描きながら、自然と視点が住人側になっていく瞬間があって、そこで「あ、これはいけるかもしれない」と思えた。
玄関を出たときの光、エントランスの植栽越しに見える空、廊下の先にある夕焼け。図面では描けないけれど、想像できる風景。そういうものが頭に浮かんでくるとき、設計が次の段階に進んだ気がする。
昼は外で軽く。商店街の裏にある昔ながらの定食屋で、焼き魚と味噌汁のセット。こういう、特別ではないけれど丁寧に作られた食事は、設計のスタンスにもどこか通じている気がする。派手ではなく、長く愛されるもの。空間もそうありたいと、ふと思う。
午後は、事務所に戻ってスタッフと進捗の確認。連休前ということもあって、少しずつみんなの動きが速くなっているのを感じる。タスクの細分化、素材の最終確認、工程の詰め。こういう地道な作業の積み重ねが、全体のクオリティを底上げしていく。ひとりではできないことも、チームでなら乗り越えられる。そう思える空気が、今の事務所にはある。
夕方、ひとり残って少しだけ手を動かした。事務所の机に残っていたスケッチをもう一度開いて、違うペンでなぞってみる。時間をおいて見ると、前は気づかなかったバランスの悪さや、逆に意図せず良かった線に出会えることがある。こういう“見直し”の時間が、実は一番自分らしい気がする。
帰宅後は、軽くストレッチをして、今日はワインを一杯だけ。4月の終わりに、ちいさな“お疲れさま”を込めて。静かに音楽を流しながら、ノートに今日の気づきを書き込む。
明日から5月。季節も、仕事も、すこしずつ次のフェーズへ向かっていく。無理に加速せず、でも確かに前に進めるように。5月は、そんな月にしたい。今夜はよく眠れそうだ。