『人形館の殺人』綾辻行人 | 京都市某区深泥丘界隈

京都市某区深泥丘界隈

綾辻行人原作『深泥丘奇談』の舞台、京都市某区深泥丘界隈を紹介します。内容は筆者個人の恣意的な感想に過ぎず、原作者や出版社とは関係ありません。

 今回より、新シリーズ『京都市某区深泥丘界隈ミステリ散歩』を開始いたします。

 

 京都市某区には下鴨神社や銀閣寺といった世界遺産をはじめ、観光名所が数多く存在し、多くのガイドブックで紹介されています。ただ、私たち地元に住んでいる人間は、普段観光名所を訪れることはあまりなく、身近な場所を散策することが多いです。一方、私が好きなミステリ小説でも、京都市某区が舞台に選ばれる事が多いのですが、観光名所だけでなく、意外なほどごく身近な場所も登場します。このシリーズは、そういった身近な場所が登場するミステリ小説をご紹介し、京都市某区のちょっと違った魅力を再発見していただこうという緩い企画です。ミステリ小説の性質上、詳しい内容については出来るだけ触れません。もちろん、解説や評論といったものではありません。気楽にお付き合いください。小説に登場する実際の場所を撮った写真も掲載し、お勧めスポットとしてご紹介いたしますので、あわせてお楽しみください。

 

 

 

 

 第1回目はやはり綾辻行人先生の作品『人形館の殺人』をご紹介します。北白川にあるという「人形館」という建物で起こる殺人事件を描いた本格ミステリー小説です。今回のお勧めスポットは琵琶湖疎水と御影通の交差点です。ヒロインが犯人に襲われるクライマックスシーンの舞台です。哲学の道を琵琶湖疎水に沿って北に歩いて行くと、やがて京大農学部グラウンドの横にさしかかります。それまで見通しのよかった疎水道も、多くの木々が繁り、薄暗く、少し寂しい雰囲気となります。ミステリーのクライマックスシーンにはうってつけの場所といえるでしょう。でも、不思議と落ち着いた気持ちになり、癒されます。私は大好きな場所です。作者の綾辻先生は京都大学教育学部出身です。学生時代にこのあたりを散策してお気に入りの場所となり、その後自分の小説の舞台に選んだのかもしれませんね。

 

 このブログをご覧いただいている方はよくご存じのことと思いますが、『十角館の殺人』から始まる『館シリーズ』は綾辻先生の代表シリーズであり、現在まで9作品が発表されていますが、『人形館の殺人』は第4作目にあたります。『人形館の殺人』はそれ自体も大変優れた作品ですが、出来れば『館シリーズ』を最初から発表順にお読みください。その魅力を何倍にも味わうことが出来るでしょう。