「たましい」だけがある天界は、以心伝心の世界。人間界のようにお互いの思いが伝わらずに悩んだり、寿命という時間の区切りに縛られたりすることもありません。
でも、天界から人間界を眺めると、日々の出来事から学びを得て成長していく人間たちの姿が、とても楽しそうに見えます。
そのため、「この世に生まれてきたい!」と願うたましいはたくさんいますが、人間界に生まれてくることは、そう簡単ではありません。
神様の審査をパスしなければ、人間界にはこられないのです。
たましいたちはそれぞれ、「次に人間界に生まれたら、こんなことをがんばりたい」「こんな人に会いたい」といった「人生の企画書」をつくり、白いひげを生やした神様の前に並んで、順番に審査を受けます。
一回で神様からOKが出ることはまれで、たましいたちはは何度も企画書を書き直しては再審査を受けるのです。
そして、ようやく許可が出ると、神様はたましいにたっぷり愛情を注いで、この世に送り出してくれるのです。

けれど、ここからがおもしろいのですが、ほとんどの人は、物心がつくまでの間に、自分のたましいがつくった「人生の企画書」の内容を忘れてしまっています。
「そんな大切なことを、どうして忘れてしまったのだろう?」
「私の『人生の企画書』の中身がわかっていれば、迷ったり余計な寄り道をしたりせずに人生を歩んでいけるのに…」
そんなふうに、もどかしく思われる方も少なくないでしょう。
もしかしたら神様は、人生で遭遇するさまざまな出来事から私たちが自ら気づいたり学んだりするプロセスを大事にしたいがために、あえて「人生の企画書」の内容を忘れさせて、秘密にしているのかもしれません。
結末を知ってしまってからミステリーを読むと、おもしろさが半減します。
それと同じで、人生も、迷ったり悩んだりしながら手探りで答えを探し、見つけていくところに、生きる醍醐味があるのでしょう。