映画『選挙』を観てきました | 清瀬市議会議員  石川秀樹のブログ

映画『選挙』を観てきました

このブログで紹介した映画『選挙』を遅ればせながら昨日観てきた。


最高に面白かったのだが、自分に対しても指さされているようで、素直に笑って楽しむという心境にはなれなかった。


程度の差はあれ(かなり差はあったが)、自分も同じような境遇に置かれていたせいか、自分の頭のなかを覗かれているような気恥ずかしさもあった。





選挙では、選挙に関わる誰もがフラストレーションを貯めてしまうものだ。


周囲の人々にさんざん世話になり迷惑をかけ、それが自分についての出来事なのに自分の意見さえも主張できないもどかしさがある。主人公の山さんが愛すべきキャラで、そのもどかしさを内に溜め込んでしまうため、思わず「負けるな山さん!」と心で叫んでしまう。





そして、この映画の主人公の山さんと奥さんとの間に、先日可愛い男の子が誕生したとのこと! 君が生まれたとき、お父さんはムービースターだったんだよと語れるのは素晴らしいことだ。




《映画の感想》


最初のシーン:帰宅する通勤客をターゲットに駅頭で演説を始める候補者の山さん。自分でユニペックスのメガホンを肩に担ぎ、のぼりと顔写真の入った看板を抱えて演説位置に並べる。通勤客は誰も気に留めていないのだが、慣れるまでは周囲の視線が気になるものだ。





駅頭での演説のさいに、「人が注意を引くのは3秒間だけ」と教えられ、演説中3秒の間に1回は名前を入れることになる。当然ながら筋道立てて政策を訴えることはできず、名前と、「改革を進めます!」の連呼となる。 私も最初の選挙のとき、事務所にやってきた「選挙のプロ」と名乗る人に「政策なんてどうでもいいから名前を連呼するんだ」と言われ、事務所のスタッフと顔を見合わせ呆然としたことがあった。天邪鬼なのでそれ以来名前の連呼はやめた。




それにしてもよくあれだけ握手ができたと感心する。バス停に並ぶ人にひとりずつ握手を求め、ほとんどの人がそれに(しぶしぶながらも)応じていた。私は握手が苦手で、相手が求めない限りは自分からはできない。握手というのは投票にそんなに効果があるものだろうか? 




告示日に新聞記者から公約の政策を訊かれ言葉に詰まる山さん。本当はこの政策こそがいちばん大事なのだけど、初めての選挙のときは選挙が近づくにつれ政策を吟味する時間が少なくなり、基本的な質問にも言葉に詰まることがある。





選対本部長の県議も地元選出の代議士も、そして先輩となる現職市議たちも、山さんの当選を目指しながらもそれぞれが抱える複雑な思惑が表情から垣間見えて、同情した。





補欠選挙というのは難しい選挙で、組織が一丸になって応援し当選しても次回の選挙では応援してくれた議員がライバルになってしまう。「恩を仇でかえす」ことがあらかじめ判っている選挙なので、応援する側も一定の距離を保ち、支持者名簿までは提供しない。どこまで応援するかは紳士協定なので疑心暗鬼になりがちだ。対立する政党間の場合は、主張では対立しても、選挙の際のこういった疑心暗鬼はない。選挙の本当の敵はじつは同じ政党・組織の人間だったりする。





奥さんも真面目な方なので指示を真に受けてしまいフラストレーションを貯めてしまう。初めて選挙カーに乗り「候補者の家内でございます」とマイクで話すのにはかなりの踏ん切りを要したと思うが、事務所に戻って誉められるとその気になってしまうところがなんともけなげだった。私の場合は前2回の選挙は独身だったので家族を選挙に巻き込むことはしないで済んだ。今回は妻は生後半年の小坊主の世話に追われていたし、妻を表舞台に出さないことに文句を唱える人もいなかったので何の苦労もなかった。これからも妻が選挙の表舞台に出ることはないと思う。





不慣れな奥さんに対してウグイス嬢はあまりにプロフェッショナルで、その対比が可笑しかった。候補者とともに握手する人を目指して駆け足で走るウグイスはかなりのプロ意識を持った方だ。





選挙に出るために借りたアパートの大屋さんとの会話が可笑しかった。家の前の排水の問題について、身近な生活の問題なのでもちろん対応しますと言うものの、この時点では行政の仕組みなど判っていないはずなので安請け合いしたもののどう解決すればいいか心の中では困っていたはず、私もそうだったから。





いくら選挙中とはいえ、24時間緊張状態は続かない。自家用車のなかで鉄道ジャーナルを読んでいる山さん。ここでも館内から笑い声がこぼれた。私は今回の選挙で初めて自分で車を運転して市内を回ったのだけど、看板のない車は誰も選挙カーだと思わないので、疲れたときは駐車場で横になって静かな時間を過ごすことができた。






映画を見に行く時間のない方も、ぜひとも『選挙』公式サイトの予告編だけはご覧ください。


http://www.laboratoryx.us/campaignjp/index.php