「若いチームで、7~8人は初めて日本に来た」と決してベストメンバーではないとジーカン監督が強調したように、前半の上海はACLクラスのチームとは思えなかった。
5-4-1ともいえるような3ラインが、攻める時は20m上がり、守る時は20m下がる。フリーランニングのないポジションサッカーのため、ミドルサードで華麗にボールを回しても、アタッキングサードに入れない。そんな戦術のため、当然、プレッシングもなく、「前半は自由にボールを持てた」とサイドバックとしてビルドアップを行っていた西大伍は言う。
一点差を追う後半、ジーカン監督が動く。「引き分けも負けと同じ」と、何としてでも2点を取ろうと3-2-3-2にフォーメーションを変更する。これにより、前半の3ラインから、4つのゾーンが生まれ、陣形が縦長になる。中田浩二が「後半、相手のシステム変更で戸惑ってしまったのかもしれない」と振り返ったように、急にプレスがかかりはじめ、鹿島は「簡単にボールを持てなくなった」(西)。
もちろん、小笠原が「常に自分たちのリズムというのはありえない」と振り返ったように、システムチェンジだけが要因ではない。西も「それよりも、僕たちの技術的ミスが増えてしまった」と自分たちの問題だと反省する。
サッカーには戦術的ミスと技術的ミスという二つのミスがある。ポジションを間違えるようなものは戦術的ミスで、決定機を外してしまうのは技術的ミスと言われている。
ジーカン監督は、鹿島の戦術的ミスを狙い、それが功を奏して、鹿島の選手たちの技術的ミスを誘発した。前半はお粗末だったが、後半のジーカン監督の狙いは的中した。
しかし、それだけでは勝てない。それが、サッカーというスポーツの深さなのである。