正月にスターウォーズを観た。スペースファンタジーとしての世界観はやっぱり凄い!ルーカスは天才だと思う。でも、何かしっくりこない。日本の正月映画「寅さん」とはあまりにもかけ離れた国の映画だから。そして、このしっくりこない感は、大統領候補予備選でのトランプ氏の支持率の高さと妙に重なる。

トランプ人気の背景についてざっくりと説明をすると、彼が主張する不法移民とテロリスト排除の演説が、文化的保守(移民の増加による雇用不安や治安の悪化に怯える白人の低所得者を中心とする)と、財政保守(リバタリアンよりの思想の持ち主や、自由至上主義に熱狂する一部の成功者)の両者の心を掴んだからだ。上品だが力不足の共和党のエリートよりも、品位にかけるアメリカンドリームの体現者を好む国は、常に戦うことで多くのモノを手に入れて来た「前向きで明るい拝金主義」の国であることは間違いない。

映画が娯楽か芸術かはさておき、あらゆる作品が経済活動の中で作られる以上、純粋な芸術など存在しないことを前提としても、拝金主義がもたらす影響は大きい。生産性ゼロ、人生のお手本とはほど遠い寅次郎のような人間にハリウッドがスポットを当てることはないだろう。ヒーロ・ヒロインは若く美しく、逆境に耐えながら悪に立ち向かう勇者でなくてはいけない。

何故か?
愚者の心情や敗者の美学などにスポットを当てれば「成り上がりたい」という欲求を削ぐことになるからだ。何かに向かって突き進むことによって生まれる消費や投資、挑戦者である限り尽きまとう所有欲。それらがアメリカ経済を支えていることは事実で、マネーメイクこそ社会的意義であると考える人々は、負け組や弱者に安らぎ与えるよりも、向上心を煽ることで更なる経済活動の無限ループへ引き込むのが狙いなのだ。

トランプ氏の爆発的な人気はそれを裏付けるには十分だ。もはや拝金主義と自由至上主義と排他的思想が入り交じった得体のしれない塊となって過激な思想へと動き始めているアメリカ社会が今後どこへ向かっていくのか。私たちは慎重に見極める必要があるだろう。

とはいえ、SWが駄作だったかと言えば、決してそうではない。充分楽しめた。
ただ、寅さんの愚行に笑いながら涙した頃の日本を取り戻したいと思っただけのことだ。