秋晴れにふさわしい、何とも気持ちのスカッとするニュースが続いている。大村氏と梶田氏のノーベル賞W受賞とラグビーワールドカップでの日本代表の3勝は、いずれも緻密な努力を積み重ね、苦難の末に栄誉を掴みとる日本人らしさが呼び寄せた吉報だ。

大村氏が寄生虫感染症の治療薬:イベルメクチンを発見する迄の道のりは、実に地味な作業だ。日常的に採取袋を持ち歩き、あらゆる場所からランダムに土を採取して研究室に持ち帰り、年間で2000株もの微生物を培養して、微生物が作る化学物質に使えそうなものがあるかどうかを調べ続ける。その繰り返しの中からイベルメクチンのほかにも、数多くの化学物質を発見し、25種類以上が医薬品などに実用化されている。

梶田氏の研究は、いわば「待ち」の研究。超純水を蓄えた巨大な水槽で、ニュートリノが通ったときに発するわずかな光を捉え、そのデータをひたすら解析していった。ニュートリノに質量があることを示す「ニュートリノ振動」の兆候をつかんでから、「間違いない」と証明するまでに約10年かかった巨大なプロジェクトである。

そして、ラグビー日本代表。エディー・ジョーンズ監督率いる日本代表は、格闘技並にコンタクトプレーが多いスポーツで小柄な日本人が勝つ為には、世界の真似ではない日本人らしいラグビーをするべきだと考え、一つ一つ積みあげていった。小柄であるからこそ可能なスピーディーで連携の穫れたパス回しでボールの保持率を上げ、じわじわと攻める。低いスクラムで相手の弱点を攻める。これらのスキルを上げる為に、筋力の増加と持久力を高めるハードワークと栄養管理などに加え、GPSなどの科学的アプローチも積極的に取り入れた。その結果、何よりも変化したのはフィジカル以上にメンタルだった。勤勉で忍耐力の強い日本人だからこそこなせた過酷なトレーニングによって裏付けられた「日本人でも勝てる」という強い意志が勝利を呼び込む鍵となった。

研究とスポーツが同じだとは言わない。只、何かを成し遂げるということは、自分の才能を他者と比べて推し量るのではなく、自分と向き合い、自分ができる最善の方法で、自分の限界まで挑戦し続ける勇気と妥協を許さない純粋な精神に突き動かされることだと思う。少なくとも、「希なる才能ではない努力の積み重ね」こそが、日本のお家芸だと世界中が賞賛しているのだから。