あけまして、おめでとうございます。本年は災いのない穏やかな一年となりますよう、また、動き始めた日本の政治、経済が一段と躍進するよう努めて参ります。

さて、昨年あたりから様々な場面で注目され、年末商戦ではギフト化までされた「遺伝子検査サービス」なるものが気になった。ネットなどで検査キットを購入し、唾液や口腔内の粘膜を検査会社に送ると、1カ月前後で病気にかかるリスクや体質、性格など各検査に対応した分析結果を返送してくれるというものだ。遺伝子検査で自分の才能も将来かかる病気も言い当ててくれる?! そんなサービスがあるなら、誰もが頼りたくなるのは当然のことだろう。ところが、この判定の科学的な信用性というのが、期待できるものではないらしい。

「そりゃそうだ。遺伝子の世界をそんなに甘く見ちゃいけないよねぇ~ 」

医師法第17条で定められているので、事業者による個人向け遺伝子検査では、検査結果が診断や治療方針に影響を与えるような遺伝性疾患を扱うことはできない。扱えるのは遺伝要因以外に環境要因が大きく影響する、生活習慣病やがんなどの病気や体質などに限られる。その為、結果は「あなたの遺伝子型の脳梗塞を発症するリスクは日本人平均の1.5倍です」「あなたの遺伝子型は飲酒で顔が赤くなりやすいタイプです」など、「あなた」ではなく「あなたと同じ遺伝子型を持つ集団」の傾向がわかるだけ。その集団の中の自分の確率まではわからない。

 難点はそれだけではない。現在の遺伝子検査では、本来多数存在するかもしれない関連遺伝子のうち、ごく一部しか検査に活用していない。つまり、検査会社によって調べる遺伝子や結果の算出方法が異なるため、別の検査で全然違う結果が出ても不思議ではない。

北里大学の高田史男教授は「今の遺伝子検査は根拠に乏しいうえ、受けた人の不安をあおったり、逆に必要以上に安心させたりしてしまう」と厳しいコメントをしている。

 もちろん、今後この分野の研究が進み、誰もが自分や自分の子供の未来について、簡単に遺伝子レベルの予測ができれば今よりずっと合理的に暮らせるだろう。が、私はそんな時代は来ないと思う。人間が人間の生命や精神を学術的に完全に解明できる日が来れば、その時はもはや人間ではなく、別の生命体になっているだろうから。

自分の肉体や性格や才能について、わからないから知りたいのであって、知る為にあれこれと経験し、苦しむのだ。苦しみを伴う経験から導きだした自分なりの答の方が、今のところ遺伝子検査よりも遥かに信用性が高い事だけは事実の様だ。