おんな城主 直虎・財前直見インタビュー | 芸術家く〜まん843

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怒るのではなく 叱れる母に

主人公“直虎”の母親・千賀役、
というお話をいただいてから、
ずっとどんな人物なのだろうと想像を膨らませ
楽しみにしていました。
そうして届いた脚本を読んだ最初の印象は、
娘にちょっぴり甘い
父・直盛(杉本哲太)に対して、
細やかな厳しさを持っているのが
母・千賀だということ。
そういう部分は今の時代とも通じるというか、
子供と接する時間が長いのが母親ですから、
やはり母の方が必然的に
しつけや教育の面で厳しくなるのは
いつの世も一緒かなと感じました。

ただ千賀を演じる上では、
幼い娘・おとわ(新井美羽)を
単に“怒る”のではなく、
人として向き合い“叱る”ことのできる
母でありたいと思いました。
親、である前に、
一番そばで向き合える“人”でありたいと。

でもね、
おとわを演じる美羽ちゃんの
かわいらしさときたら……。
厳しく接するのも楽じゃない、
というほどキュートなんです(笑)。
クルクルと変わる表情の愛らしさ、
髪を剃るなどの容姿の変化もあって、
美羽ちゃんのシーンは
モニターに釘づけになってしまうほど。
そして、美羽ちゃんの演じる
おとわの無垢なかわいらしさに触れるうちに、
私も千賀として、
「この娘を何としてでも守ってあげたい」
という気持ちが
より強く芽生えたように思います。

世の厳しさを見越して 娘と向き合う

これだけ愛おしい存在の娘を、
お家のためとはいえ
仏の道に送り出さざるを得なかった
千賀の気持ちは
どれほどつらかったでしょうね。
出家したその日に、
おとわがお腹をすかせて家に戻ってくる
シーンがあるのですが、
本音を言えば、
帰ってきてくれてうれしいに違いないのです。
でも、
千賀はそれらをすべて隠して
あえて厳しく接する。
それは乱世に生きる武家の母として、
この先の娘の道筋までも見据えての
行動なのだと思います。

“直虎”を演じる柴咲コウさんは、
美しさとりりしさが印象的な方です。
ロケで会ったのが初対面だったのですが、
立派に成長した直虎を馬上に見たときに、
その神々しいまでの存在感に
「殿だ!」と瞬時に思えました。
自分の手もとで本来は姫として
大切に育てたかった娘が、
まさに井伊家を背負う
立派な“殿”になっていると。
その姿に、母として
さまざまな思いが去来しました。
でも、娘には
千賀のDNAが受け継がれている気が
すごくするんです。
小さなころから男勝りだったり、
どこかで自分に似た芯の強さがあることを
母としては感じていたでしょうね。

大河ドラマの醍醐味と森下脚本の魅力

大河ドラマは
「炎立つ」(1993年)や
「義経」(2005年)に
出演させていただいていますが、
やはり1年以上の時間をかけて、
多くのスタッフと作り上げる
スケールの大きな世界観が醍醐味ですね。
今回も改めて
美しく豪華な衣装や
丁寧に作られたセットのすみずみに至るまで、
それを感じていました。
俳優陣もみんな仲良しで
みんな“飲ん兵衛”で(笑)、
本当にみんなが大きなファミリーのような
現場です。

今回連続テレビ小説
「ごちそうさん」(2013年)に続き、
森下佳子さんの脚本で、
かつ主人公の母親役というご縁。
森下さんの脚本は
たくさんの愛にあふれ深い味わいがあるのに、
ふとした瞬間に笑わせてくれたり、
そうかと思うと
ぐっと泣かせる場面があったりと、
本当にすごいなといつも思わされます。
私自身、すべて楽しみなシーンの連続。
「おんな城主 直虎」も、
1人でも多くの方に楽しんでいただけたら
うれしいです。