寒さ厳しい晩秋から早春にかけて、だいこんの甘みが増し、とりわけおいしい季節を迎えます。だいこんは、きゃべつや菜の花と同様、アブラナ科に属する野菜で、栽培の歴史は古く、古代エジプトのピラミッド建設の際にも食用とされていたのだとか。日本でも古くから愛され、「すずしろ」として春の七草にも数えられ、奈良時代に勅撰された古事記(712年)にも「おほね(大根)」の名で記されていいます。
現在、主に生産されているのは、昭和40年代から主流となった、辛みが少ない青首だいこんです。農林水産省が発表した平成25年産の収穫量によると、だいこんは47都道府県すべてで栽培されていますが、第1位は北海道の167,900トン、第2位は千葉県の158,100トン、第35位は青森県の124,300トンでした。ちなみに、秋冬だいこんの収穫量の上位は宮崎県や鹿児島県など温暖な地域、春だいこんは千葉県など、夏だいこんの上位は北海道や青森県など冷涼な地域となっています。
~用途に合わせて部位や調理法を選ぶ~
生のだいこんには、でんぷん分解酵素ジアスターゼ、タンパク質分解酵素プロテアーゼ、脂肪分解酵素リパーゼなどの消化酵素が含まれているため、麺類の薬味や揚げ物などにだいこんおろしを添えることで消化を助ける働きがあります。さらに、焼き魚などの焦げに含まれる発がん物質の働きを抑えるといわれるオキシターゼや、がんの予防や抑制効果が期待される辛み成分イソチオシアネートなども含まれ、近年、健康食材として特に注目を集めています。
また、だいこんは部位によって味わいが異なります。辛みが少なく甘みがある上部はサラダやだいこんおろしなど生食に、加熱すると甘みがより一層増す中央部分は煮物やおでんに、辛みの強い先端部分は炒め物や辛みが欲しいときのだいこんおろしに。ビタミンCやカロテン、カルシウムなどを豊富に含む葉も、捨てずにぜひ活用しましょう。今回ご紹介する「だいこん葉の肉みそ」は、沖縄県在住のジュニア野菜ソムリエ上原咲子さんのアイデア。ご飯にのせたり、お弁当にもおすすめです。
だいこんのステーキ~だいこん葉の肉みそ添え
だいこんは厚さ2センチの輪切りにし、皮をむき、塩を加えた昆布だしで煮て、火が通ったら取り出し、フライパンでこんがりと焼く。だいこんの葉は長さ2センチに刻み、鶏ひき肉、おろししょうが、おろしにんにくとともにごま油で炒め、みそ、みりんで味を調え、だいこんステーキにのせる。
~全国各地で栽培される品種いろいろ~
日本は世界の生産量・消費量の9割を占める、だいこん王国。品種の数は100を超えるそうで、千枚漬けで名高い京野菜の聖護院だいこん、神奈川県は三浦半島特産の三浦だいこんなど、各地方の風土や文化に合った品種が栽培されています。
一番小さなものは、直径2センチほどの、二十日だいこんとも呼ばれるラディッシュ。長さのナンバーワンは、守口漬でおなじみの、1メートルを超える守口だいこん。重さの1位は、20キロに達するものもある桜島だいこん。これほど多彩な種類を持つ野菜は、他にはちょっとないかもしれません。
色も白ばかりではなく、切ると中が鮮やかな紅色をした紅芯だいこん、皮や中まで紅色や紫色を帯びた赤だいこんの仲間、中は白くて皮だけ黒い黒だいこんなど、様々な種類が近年お目見えしていますので、ぜひ探してみてください。