「対象と一体となることが成長の鍵」原田要(最後の零戦パイロット) | 芸術家く〜まん843

芸術家く〜まん843

お越しくださりありがとうございます

“零戦パイロット最後の生き残り”と呼ばれる原田要さん、98歳。
戦時中は、エースパイロットとして幾多の激戦を潜り抜けてきました。
現在、長野県のひかり幼稚園で顧問を務め、いまも毎日現場に足を運び、未来の日本を背負う子供たちを育てています。
そんな原田さんが体験を通して掴んだ「成長の秘訣」とは——。

全国から1000人を超える志願者があったといいますが、どうにか書類選考と学科試験を通って
150人の合格者の中に滑り込み、茨城県霞ヶ浦の海軍航空隊へと向かいました。

合格者150人に入れたとはいえ、皆が操縦士になれるわけではありません。

ここからさらに1割の15人まで絞り込まれます。

まずは、現在の宇宙飛行士の試験のような身体能力の検査によって50人が落とされ、今度は残った100人で実際の飛行訓練を行います。

「おまえ、帰れ」「おまえも帰れ」
と次々に落第者が元の部隊へ戻されていきました。

私たちの指導教官は海軍で1、2を争う名パイロットとして有名な江島准士官でした。

江島さんは特に私が操縦している間ずっと怒鳴っています。

こんなに仲間が帰されていく中、毎日怒鳴られている私は、もうこの先はないだろうと諦めの境地にいました。

私は思い切って江島さんを訪ねました。

「私は親に嘘をついてまで飛行機に乗りたくてここまで来ました。しかし、あんなに怒鳴られるということは、自分には適性がないことが分かりました。明日原隊に帰してもらいたい」

「原田、俺はおまえが憎くて叱っているんじゃないぞ。おまえには素質があるから、それを早く引き出してやろうと思って言っているんだ。俺はダメなやつは叱らない。俺に叱られたら励ましだと思え」

翌日からの訓練でも江島さんからずっと怒鳴られ続けました。

やることなすことすべて怒鳴られ、さすがにカチンときて、

「何やっても叱られるなら、もう勝手にしろ!」

と半ば操縦を放棄しました。

すると「よし、いまの調子だ!」という江島さんの声が聞こえます。

どういうことだ?頑張って操縦していた時は怒鳴られ、操縦をやめたら「いまの調子だ」と……。

私はその時、気づきました。

自分が飛行機を操縦し、こっちへ行かせよう、あっちへ行かせようという心構えが、余計な力みと緊張に繋がっていたのではないかと。

そうでなく、

「俺は右に曲がりたいから、一つよろしく頼むよ」

と素直になって、飛行機と一体になることが大切だったのです。

私はその晩、再び江島さんを訪ねました。

『致知』2014年11月号より

心に響く小さな5つの物語 (小さな人生論シリーズ)/致知出版社

¥1,028
Amazon.co.jp

プロフェッショナルヘの道 / 致知編集部 【単行本】

¥1,404
楽天