“あ、挨拶!?“




私は大きい声で聞き返してしまった。

するとあっくんは話し続けた。




“うん。出来れば俺、この先あゆみちゃんと住みたいと思ってんねん。“


急にグイッと来た!!!
展開の早さに頭がついていかない。



“え??“


まぁまぁ低い声で聞いたのを覚えてる。


すると、あっくんはハッとしたのか
フォローするかのようにとっさに答えた。



“いや、ちゃうねんで。俺も忙しいし中々会われへんから、あゆみちゃんが良ければ家からお店も近いしちょこちょこ来たらええんちゃうかなぁ思って。“






それって……!?!?




“ってことは、、、“



“あゆみちゃんと同棲したいと思ってんねん。“


すごい展開の急な告白!!!!!
なんだったら付き合う時の告白よりも私いまドキドキしている。



“まじで!?“


“まじやで。まぁもちろんタイミングもあるやろうしその辺はあゆみちゃんに任せるわ“


“嬉しい!会える時間ができるもん!“


“それやんなー。ほんま全然いま会われへんからおっさん寂しいねん。“


その言葉にクスクスと笑うとあっくんもつられて笑っていた。



“せやから、ちゃんと付き合ってる事もこの先の事もご両親に早めにお話せなあかんなと思っててん。ええかな?“

やっぱりこの人は律儀で真面目で誠実な人だ。


“もちろん。むしろありがとう!“


“なんて言われるんやろ。ちなみに近い日にちで話せそうな時間で空いてるのは………“



“どうしたの???“





“…明日やわ。。“



“え?はやっ!!!“


そう言って私はまた笑っていた。
もちろんあっくんは変な汗をかいているようだった。



“明日私も仕事出てるし終わりでパパに話そう!“


“うわ、急にお腹痛なってきたわー。もう帰ろか“


逆に私の緊張を解いてくれるかのようにあっくんが笑いに変えてくれた。



そうしてデートを終え、帰ってママに話す。



“明日、石田さんが付き合ってる事をお店に話に来るから最後まで居てくれる?“


それを聞いてママは安定のハイテンションだ。


“えーーーー!ついに!ついに!?
キャーーー!ちゃんと挨拶しなきゃね!“


“うん。でもパパにはその場で石田さんから話すからまだ言わないでね“


“言わない言わない!2人の秘密知ってるのママだけ♡キャーーー!“


“……おやすみ“


早くあっくんに連絡をしたくて
長くなりそうだったママとの話を切り上げた。




そしてあっくんにメールをした。


“今日はありがとう。ママに話したよ!明日大丈夫だって。よろしくね!“


“こちらこそありがとう。ほんまにー?いやーやっぱり緊張やわー。挨拶の練習して酒飲んで寝ます。“


12歳も上とは思えないほど
素直で真っ直ぐなあっくんがとても可愛くみえた。






そしていよいよ決戦の日。


いつも通りお店へ行き、パパと普通に会話をしながら仕事をする。

そこへママはちょっぴりよそ行き仕様の洋服でお店へ来た。


閉店は22:30。

あっくんが来るのは21:00予定。


何も知らないパパと緊張する私、あからさまにニヤニヤしているママ。


そして予定通り21:00ピッタリに
あっくんは仕事を終えお店に来た。

奥のカウンターへ案内し、1時間半ご飯を食べ仕事をしながら待っててもらう作戦だ。


“ビールでいい?“

“あ、今日は大丈夫。ウーロン茶を。“

“え!?“

“挨拶ちゃんとしたいから今日はお酒なしで“

“ホント?分かった、ありがとう“


そういうとパソコンを開き仕事をし始めた。
今思うとこの時、仕事なんか出来ていなかっただろう。



そこへすかさず、ママが現れた。
そして小声であっくんに話しかけた。


石田さんっ♫あゆみから聞きました。もう本当にありがとうございます。わがまま娘で足りない所いっぱいあると思いますがどうぞよろしくお願いしますね。“


ママ、、母の挨拶してるー!!
でもなんかその光景が素敵だったのを今でもよく覚えている。


あっくんもボソボソとなにかを話し深々と頭を下げた。




“はいよ!生お待ち!“

ナイスタイミングでパパが生ビールを持ってきた。


あっくんと私とママは
3人でキョロキョロと顔を見合わせる。

そして私はとっさに言った。


“パパ!今日は石田さん飲めないんだって“

“え?飲まないの?なに?仕事?“


理由がなくて気まずそうにするあっくん


“あっ…いえ。あの、今日、実は……“

全然うまく話せていない。



すると、隣の常連さんがあっくんに気付いた。


石田さん来てたのかー!席隣なんて嬉しいよ!一杯おごるから一緒にどうです?“


今日に限ってタイミングが全部良すぎる。




“すんません、今日飲まない日にしてるんすよー。“


“仕事なのか?“


“いや、仕事は終わったんすけど…“


“なら一杯だけ飲もうよ!乾杯したいんだ!“


どこまでも素直なあっくんに飲まない理由はもうなかった。


チラッと私を見るあっくん
多分それは、さっき飲まないと言ったのに飲んでいいのか?の目だったように見えた。

私は、大きく頷いた。



するとあっくんは、、、



“すんません!じゃあ一杯だけ頂きます!“


皆の空気を読んでそう言ってくれた。

飲まないと言い切るのも素敵なのかもしれないけど私はここで臨機応変に優しく対応してくれたあっくんを素敵で優しい人だと思い、飲んでくれた事を嬉しく思った。


“無駄になるとこだったから助かったよ!“


パパが冗談まじりに持っていた生ビールをそのままあっくんに渡した。


“ありがとうございます!
あのっ!閉店後少しお時間頂いてもいいですか?
ちょっとお願いとお話しがありまして…“


ママは鼻歌をうたい明らかによそよそしくした。
私はドキドキしながらパパを見つめた。


“ん?おぉ。終わり22:30だけど大丈夫?“


“はい!すんません!お願いします!じゃあ一杯だけ頂きます!!!“


あっくんは挨拶をしてから
気合いを入れるかのように飲んだ。



一言めにこう言った。


“くぅ〜!悔しぃ〜!“

この意味は、私とママだけに伝わっていた。



そして22:30閉店。

パパも話しがあると言われて
少し早めに片付けていたのを何となく感じた。


お店を閉店させ、入り口を閉める。


“ごめん!トイレだけ行かせて!“


営業中、長時間トイレに行っていないパパは話す前にトイレへ駆け込んだ。


その間にあっくんと私が隣に座る。
ママは隣のテーブルにちょこんと座っている。



“ドキドキするね“

“うん、でも大丈夫。伝わるはず“

真っ直ぐ前を見つめたままあっくんは言った。



“ごめんごめん!おまたせ!“



2人で並んで座ってるというサプライズ。





“ん?どした?“




“いや、あの……“



















“ごめん、ダメだよ“











!?!?!?


まだ話してもないのにダメって!?
え?お付き合いにまさかの反対!?


なんで?どうして?
あっくんの何を見てそう言ってるの!?




“ごめん、取材の件だよね?この間もよそから来たんだけど。ウチの店、そういうのは断ってんだよね。“





!?!?

なんの話ですか!?




“え?“


“え?“


“え?“


“え?“


“え?“


“え?“



“すみません!全然違います!
あゆみさんとお付き合いさせて頂いてます!“


“え?????“


“気は早いんですが結婚前提のお付き合いをしたいと思い今日はご両親にまずはご挨拶させてもらいに来ました。“


“え??“


“えーーー!?“

一旦ママには静かにしてもらう。


そして、私は一旦落ち着こう。

結婚前提?同棲の話じゃなくて?
もう全員のハテナが止まらない。



“あ、そっち?“

え、どっち?え、まさかのその反応?



“びっくりした??“


“うん。俺てっきり、ウチくる⁉︎のロケのお願いかと思ってた。“



もう全然噛み合ってない!

そしてなぜかパパも違かったことにホッと安心して付き合ってることを笑ってOK OK!ポーズしている。



なにこの展開。。。


笑う私。
つられて笑うあっくん、ママ、パパ。




“まだまだなヤツかもしれないですけど、優しくていいヤツだとは思うんで色々大目に見てやってください。“



そうとだけ言った。



“ありがとうございます。“



皆で笑いに包まれた。
無事に?パパへの挨拶は終わった。。。





“うわーめっちゃ緊張したー。んで、お父さんそれどんな間違いなん!?“


さっそくツッコんで場を和ませてくれるあっくん


プロにつっこまれて嬉しそうなパパ。



“せっかくだから最高な日に乾杯でもしましょうよ“


パパからそう言ってくれた。


瓶ビールにグラスを4つ。
誰が誰に注ぐか定番のわちゃわちゃをして乾杯。



22:30の閉店後、

1:30まで4人で飲み明かした。





“お父さんとお母さんも話聞いててすごく良い人なんだよ“


“近々来るんすよ東京に。“


“えー!是非ウチのお店に来てもらいたいね!“


“是非是非。時間があれば。“


“ほんまですかー?絶対喜ぶわー。連れてきます。“


“今度は私がドキドキだー。いつ来るの?“


“いつやっけなー?“



あっくんが携帯を見た。


“うわ!明々後日やわ!“












“え?はや!!“




つづく。