慌ただしくクリスマスが終わり、
あっという間に年末を過ごし、
ダラダラと過ごしながら2012年を迎えた。




そして1月10日。

今日は私の誕生日。

待ちに待った、二十歳になった。



しかし何も変わらない日。
相変わらず今日もお店の準備や仕込みを手伝う。




そしてママが遅れてやってきた。


“あゆみちゃ〜ん!
お誕生日おめでとう〜!“


相変わらずハイテンションなママだ。


私が誕生日だからと大きなケーキを買ってきてくれたよう。

どこで買ったか話、
店員さんとの会話、
どれだけ悩んだか話、

ケーキを買った時の一部始終の話をしてくれる。早くケーキを冷やしてほしいところだが話は終わらない。これはいつものことだ。慣れたもんだ。


うんうん。と頷き続ける。




“ケーキなんてしばらく食べてないでしょ?“


とビックリな発言をしてくる。




“クリスマスに食べたじゃん!“



と言うと、すっかりクリスマスにケーキを食べた事を忘れていたようだ。


アハハ〜と笑いながらも
ママはハッ!としたように言った。





“そういえばあの日以来
石田さん来てないんじゃない?“




うん、確かにそうだ。
クリスマス以来お店には来ていない。

きっと忙しいんだ。
クリスマス、年末、お正月とくれば芸能人はパーティー続きだろう。



“忙しいんだよ、きっと“



とママに伝える。

あまり深入りしちゃダメだよと遠回しに言うように。



しかしうちのママは
自称、【プロのミーハー】だ。


どこまでもグイグイ行くのである。




“あゆみちゃん♪あゆみちゃん♪
実はね!♪ 
いつも石田さんに来てもらってるからっ♪今月末にあるっ♪
NON STYLEの単独ライブのチケット2枚取っちゃったー♪♪♪“





って、おいおいおいおい。


まてまてまてまて。


ちょーーっっっと、まって!




あの暗くて
話したくなさげで
何も聞かれたくない
石田さんのお仕事の場に
私たちが行くなんてことしたら
大大大迷惑ですわ!!!!!!

もう二度とお店にも来なくなるだろう。


“え!?なんで?
てか二枚って一枚は私の!?“


するとニンマリママ。







“うん...♡“



私、お笑いなんか観た事ないし行っても笑えるか分からないよー。


“だから石田さんが次に来た時
ママが居なかったらその事、伝えておいて“




ママの急な無茶振りに
二十歳すぐに変な緊張感を感じた事を今でも覚えている。





そして
その日はすぐにやってきた。
















次の日、石田さん来店!!!



今日は顔が少し赤い石田さん。



“いらっしゃいませ!
飲んで来られたんですかー?“


とりあえず温かいおしぼりを渡す。
メガネを取りおしぼりを顔に当てている。


“ん〜。。。はい!


声でか!!!!!
初めて聞いた石田さんの大きな声!!!!

なぜか、もはや感動までもした。



そして周りのお客さんと話し出す。
いつも黙々とパソコンを開き仕事をし、全く周りとは話さなかった石田さんだが、やけに今日はご機嫌だ。


常連さんが私に話しかけてくる。

“あゆみちゃーん!
この人芸人さんなんだってよ!
話しやすいし良い人だよ!“



(はい。知ってます知ってます。
パーティーとか行ってる本格的な芸能人さまですよ。
あまり深入りはしないでおきましょうか。)

心の中で常連さんに叫ぶ。




すると石田さんが、、、


“俺なんかクソですわー。芸人とか生意気なこと言えないっすけど、お笑い大好きオタクなんすー。


と陽気に応えている!!!!!
とても話しやすい雰囲気だ!!




そうこう話していると
昨日のママの話を思い出す。


今日はママが居ない。

  

私が
伝える時が来た。






“あの〜。
今月のNON STYLEの単独ライブをママと観に行きます!“









・・・























“お会計
お願いします“

















え?

怒らせちゃった???



そして千鳥足のまま早歩きで帰って行った。




つづく。



ほいでは!