3日間のプレオープンが終わり
お店も落ち着きはじめた。

お客さんともゆっくり話せる時間が増え会話が弾む。


しかしたった一人だけ
唯一会話が弾まないお客さんが居た。



・・・




石田明さんだ。



どうも会話が弾まない。

いつも入ってくるなりペコッと俯き加減で挨拶をし席につくとパソコンをすぐに開く。

どうやらお仕事が忙しいようだ。


週に2.3回は
お店に飲みに来てくれているが
いつもパソコンと睨めっこしているからなんとなく話しかけづらい。

本人も没頭しているからか
最初に頼んだ生ビールが飲み終わっていることに気づいていない。


生ビールの後はいつも芋焼酎を飲み始めるのが石田明さんの定番。


きっと今日もそうだ。


毎度声をかけるのもかけられるのもめんどくさい人なんだろうと思い
私は提案をしに
石田明さんの席に向かった。



“あの!
焼酎ボトルで頼んだ方が自分でも作れるし楽じゃないですか?キープも出来るし“


と営業もかけつつ提案。



すると、即答。


“あ、すんません。ありがとうございます。ボトルお願いします。“


あまりにもあっけなさすぎて
なんだか私、詐欺師の気分。


キープボトルにはポスカで名前を書く。



“お名前なんですか?“

ここで初めて名前を聞いた。




      



“石田です。“



【石田さん】と書いて
カウンターにボトルを置く。

なんとなく石田さん嬉しそうな表情をしたように見えた。



すると後ろに座る常連さんが 
 
“あゆみちゃん!ちょっと来て!“
となにやら焦って声をかけてくる。


“なになになになに!?“
と常連さんの元に駆けつける。


常連さんは私に近づき小さな声で


“あの人
芸能人だよね?“


と聞いてきた。




私は常連さんが
何を言っているか分からず



“え??
違いますよ“


と答えた。



今思うと失礼なことを無知なくせに堂々と言ってしまっていた。


だって石田さん本当に
芸能人だったから。。




違う常連さんも

“絶対にそうだよ“

“芸人さんだよ“

“NON STYLEの白い人だよ!“

と盛り上がり始める。



私は失礼ながら誰なのかを知らない。
急いで裏の休憩室に回りお店のパソコンを開く。


のんすたいる

と調べた。


出てくる画像では、
爽やかな笑顔。
清々しいほどの真っ白な衣装。


私がお客さんとして見ている
石田さんとは全くの別人だ!!




芸人さんと知ったはいいけど
それを聞いていいのかも分からない。


“知らないなんてありえない“
と常連さんが言ってくる。




しかし本当に
知らなかった。



石田さんがM-1の優勝を獲ったその頃、私はテレビも観ず外で遊び呆けていた頃だったからだ。


お客さんとして石田さん人柄を知りたくなった。


唯一お客さんの中で会話が弾まない
あの石田さんと!
話すきっかけが出来た!
チャンスだ!とまで思った。


そして石田さんに声をかける。





“お仕事、、大変ですか?“






すると、こう答えてきた。


     

















“あ、大丈夫です。“






・・・








余計に絡みづらくなった。









この後も石田さんとの



弾まない会話は











つづく。



ほいでは!