昨今、コロナ問題で様々な業種で不況が生じている。
実は鑑定業界も例外ではない。
影響を受けるのが主に民事事件である。
卑近な例では、平時に北朝鮮がミサイルを撃つと国民は戦々恐々でテレビにはテロップが流れる。
ただし、コロナ問題で世間が戦々恐々だとミサイル如きに構ってられない。
いわゆる、 「今それどころじゃねぇ!」 という感覚だ。
これと同じで、民事事件であれば 「コロナで裁判どころじゃねぇ!」 となってしまう。
提訴自体が激減するし、期日にウルサイ裁判所も延期に積極的だ。
訴訟が減るという事は、鑑定業務の依頼も激減・・・・
DNA・法文書・画像・交通事故等の民事・・・・
これら鑑定業務は大幅な売り上げ減が避けられないだろう。
そもそも事件事故は突発的であるため、鑑定会社の経営はかなり不安定である。
自転車操業が殆どで数ヶ月分の運転資金ですら怪しいのが業界の実態だ。
損保系以外の会社がナントカやってこれてきたのは、殆どが外注であるためである。
鑑定人を自社採用して給与という固定費を払い続ければ鑑定会社は詰む。
保険系以外の鑑定会社は、日給月給の外注鑑定人を登用し固定費を抑えている。
好況時には上前を撥ね、不況時には切るというリスクヘッジだ。
これでも、今回のコロナ不況は事務所維持費など影響が甚大である。
梁に腕以外でぶら下がる鑑定人や鑑定会社経営者がでてきてもおかしくない。
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ただ、その真逆で、警察依頼の刑事関係はコロナお構いなしの大盛況である。
むしろ、コロナで人心が不安定なせいか、軽微なものから大規模なものまで犯罪が激増。
更に、刑事関係の鑑定受任は蓄積が要求される職種である。
かつて実績があったとしても、僅か数件の鑑定不能案件があれば受任できない。
継続した受任実績だけがモノをいう極めてシビアな信用商売である。
しかも、逮捕・送検・拘留の期日が決まっているので期日の延長は禁忌だ。
依頼が実績のある鑑定人に集中し、業務のパンデミックが起きてしまう。
事務所内は次から次に持ち込まれる案件で怒号と喧噪に包まれる。
閑古鳥がハーモニーを奏でる民事とは対照的な光景だ。
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ところで、コロナ不況は東北震災後の状況に近似している様に感じてならない。
前職では、刑事関係と期日がタイトな民事を組み合わせ、命金を確保して波を越えた。
今思えば、かなり危ない綱渡りで、地雷も随所に埋まっていた。
これを踏まずに、震災後の苦境を切り抜けてきたのは僥倖だったのかも知れない。
今回のコロナ不況も乗り越えねばと強く思う昨今である。