なぜ、吉澤ひとみの車は猛スピードに見えるのか? | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

吉澤容疑者の事故時の映像が衝撃を以て伝えられている。
ただ、我々の目から見て、さほど衝撃は感じていない。
何故かと言えば、衝突後に被害者が自立歩行しているからだ。
我々の元に寄せられる歩行者事故の動画は、被害者は大抵ピクリとも動かない。
中には激痛でのたうち回るモノもあるが、痛みを感じていることは生きている証拠だ。
視ている側としては何故か安堵してしまう。

話を吉澤容疑者の事件に戻す。

猛スピードで交差点に進入したとの書き込みが目立った。

たしかにそう見えるが、この動画で猛スピードに感じるのには理由がある。
下掲の3画像は、画角に車両が映り込む瞬間とその次と更に次のフレームだ。

この3枚のフレームが再生される時間は均等で、フレーム間時間は0.099secである。

 

1枚目と2枚目の移動量が、2枚目と3枚目に比べて大きいことがわかるだろう。
2枚の画像を投影して観察すると、およそホイールベース分車両が移動している。
ちなみに、この動画のフレームレート10.1fps、0.099秒である。
アルファードのホイールベースは3mだ。

つまり、この前後のフレームは瞬間的であるが109km/hの状態で移動していることとなる。
ただし、衝突時の速度などと矛盾するため、フレームが欠落していると見る方が妥当であろう。
もの凄い猛スピードに感じるのは、このフレーム欠落に由来するものである。

 

おそらく、2フレーム程度は脱落しているのではなかろうか?
ドライブレコーダから一般的な汎用再生形式に変換するときにはフレーム落ちが生じやすい。
また、更にネット形式に変換する場合もフレーム落ちが生じることがある。
私が、某番組から速度推定の相談を受けたが断ったのはこのためだ。
つまり、進行時の速度の推定を行うには極めて精度の低い動画と言える。
フレーム落ちが考えにくい衝突時の速度は推定できても進入時の速度推定は不可能だ。
同業者にも聴いたが、皆同じで、進入速度の解析は不能。
あくまでも、根拠が薄弱な推定値しか出せない筈だ。
その筈なのに、不思議と自称専門家による進入時の速度鑑定結果が出されている。
この数字は独り歩きし、冤罪の温床になりそうで怖い。

 


 

FAL