ながらスマホ厳罰化は必要か | 事件鑑定人のブログ@鑑定人イシバシ

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私が事件鑑定人としてこれまで経験したことを書きます。
特定を避けるため、一部、ぼかしたりフェイクもありますが、概ね実体験です。

遺族「ながらスマホ事故」の厳罰化が必要

去年12月、大学生だった女が、いわゆる「ながらスマホ」で自転車に乗り、衝突した女性を死亡させた罪に問われた裁判で、執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。 ****被告は、大学生だった去年12月、神奈川県川崎市でスマートフォンを操作しながら電動自転車を運転し、前を歩いていた****さんに衝突し、死亡させた罪に問われている。 27日の判決で、横浜地裁川崎支部は「運転態度は、周囲の者の安全を全く顧みない自己本位なもの」などと厳しく指摘した一方で、「危険性が特に高い運転だったとまでは言えない」として、**被告に禁錮2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。 **さんの二女「この事故を不幸な事故だとか、母がかわいそうだったとか、そういうので終わらせてほしくない」 **さんの遺族は、「ながらスマホ事故の厳罰化が必要」と訴えた。
[ 8/27 23:54 NEWS24]


スマホを操作しながら電動自転車を運転した女性が歩行者と衝突した事故で死亡者が出た。
ご遺族は 「ながらスマホ」 由来の事故厳罰化を訴えている。
身内を殺された側の処罰感情は峻烈であろうし、その気持ちは尤もなものだ。
しかし、私は厳罰化に舵を切るべきではないと考えている。

厳罰化は立件までの捜査の煩雑さを招く。
現に、危険運転致死傷罪ですら、見逃されている事例は多い。
結果として、モノいえぬ被害者の過失が過大評価され、被害補償のチャンスを喪う。
これは、危険運転が疑われる多くの事例で現に起きていることだ。
現在、危険運転で起訴されている事例の大部分が赤信号の殊更無視で飲酒ではない。
本来、飲酒運転に対して成立した厳罰化が形骸化した感がある。

また、厳罰化されれば、逃走を企てる加害者が続出するであろう。
その結果、被害者は救護されるチャンスを喪う。
更に逃走の過程で二次三次の事故が起きる懸念も否めない。

感情論としての厳罰化は理解できる。
しかし、厳罰化でも一定数の交通犯罪は防げないことは飲酒運転が証明した。
厳罰化は、情緒ではなく理性で選択すべきことだと思う。