なんでも、ひなのがオンラインゲームをはじめたのは、もともとその人からの誘いがあったそうです。
けれどだんだん「ただの友達」の枠に収まらない彼の言動に付き合いきれなくなり、一緒にオンラインゲームをはじめ、彼とも交流のあった『さな』と二人、「もう関わらないでほしい」と伝えたそうです。
「あなたも、裏切るのですか。
身内で結託し、知らないところですべてを決めて、弁解さえ許さずに、私を裏切るのですか。」
その言葉がさす人物は、さなのことでした。
そして、その頃から、彼は別人のふりをしてひなのに近づいたり、ひなのと交流のある複数名の女の子に、メールを送ったりを繰り返していたそうです。
その事実をひなのから話を聞いたとき、もう言葉が出ませんでした。
彼からのメールとひなのの言葉の印象があんまりに違いすぎ、それはとても同じ物事をさしているようには思えませんでした。
彼はこうも言いました。
「話を聞いてもらううちに、いしゃさんに惹かれてきました。」
冗談だと流したその言葉が急に恐ろしくなり、その時に、残っていた彼から来たメール、彼に送ったメールをすべて消しました。
インターネットという顔の確認のできない場所を、そして別人になりすますことのできる環境を、
あらためて恐ろしく思いました。
「ひなちゃん、そのオンラインゲーム続けるの?」
「うん、もう話しかけてこなくなってきたし、大丈夫だから。」
彼が私にコンタクトをとってきたことを知り、深く憤っていましたが、彼を原因として自分の好きなものから離れるつもりはないようでした。
私は急に不安になりました。
もともと、ひなのは「男性」とのやり取りが得意なほうではありません。
高校はほとんど女子クラス、大学も芸術関係で男性と関わる機会など数えるほど。
一度二人で遊ぶことを誘われ、出向くと人気のない神社で突然抱きしめられたそうです。
それは、どれほどの、恐怖だったでしょう。
「…私も、やってみようかな…」
もし、半年前に、彼女の誘いに乗ってゲームを始めていたら。
彼女の力になれていたはずなのに。
もちろん、彼女が心配だっただけでなく、好きだったSS書きの人がやっていて、興味がわいていた。という心境の変化も理由にありましたが、とにかく、今度は、ひなのがストーカーなんかに遭ってる時に、すぐに相談にのれるように。
助けてあげられるように。
ひなのに教えてもらいながら、私はそのゲームの公式HPから、ゲームをダウンロードしました。
これが、私がオンラインゲームをはじめた理由でした。